俺たちは走り続ける
□これが化身だ!A
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「すみませんキャプテン…」
『松風…』
後ろからの声に振り返ると、松風がしょんぼりしながら立っていた。
「俺、フィールドにいても何一つ役に立てませんでした」
俺は神童の顔をチラッと見たが、目を瞑り無表情を決め込んでいた。
「でも…このままサッカー部が取られちゃうなんて嫌です!」
『落ち着けよ、松風』
俺はそう宥めたが、他に何て言えばいいのかわからないかった。
「俺だってサッカー部は渡したくない」
すると、黙っていた神童が口を開いた。
「だけどアイツ等半端じゃない。悔しいけど、俺たちを凌ぐ力だ」
『…これがフィフスセクターのやり方だ』
「フィフスセクターって…」
『!そっか、お前まだ…』
「…知らないんだな」
俺と神童は顔を見合わせた。
俺たちにとって、フィフスセクターを知らないという状態があまりにも驚きだった。
それだけ、フィフスセクターは俺たちの中で圧倒的存在になっているということか。
『10年前、日本が少年サッカーで世界一になっただろ?
それでサッカーの人気が高まった結果、
サッカーでの強さが学校の社会的地位までも決めるようになっちまったんだ』
「強ければ栄え、弱ければ潰れていく。
今は、サッカーが学校や人の価値を決めているんだ」
「サッカーが?」
松風は、少し悲しそうな顔をした。