俺たちは進み始める
□差し込んだ光
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病院からの帰り道。
不良にからまれていたクラスメイトの倉間くんに会った。
倉間くんと喋ったのは初めてだったのに、俺の名前を知っていた。
ちょっと、いや、かなり驚いた。
「ありがとな」と言われた。
本当に嬉しそうな顔に見えた。
「また明日な」とも言われた。
また、明日。初めて言われた。驚いた。
また明日。また、明日。不思議な響きだ。
「あ、おかえり神原くん!」
木枯らし荘の前で木野さんが待っていた。
『……、どうも』
俺はどうしても、木野さんに「ただいま」と言うことができないでいた。
「お腹空いてるでしょ?ご飯できてるから」
それでも木野さんはいつだって優しい笑顔を向けてくれる。
暖かい言葉をくれる。
申し訳ないと思いつつも、俺はやっぱり何も言えずにいた。