俺たちは進み始める
□接触
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<浜野海人視点>
「今日も見てたな!」
「あぁ、そうだな」
部活が終わって倉間と2人の帰り道。
今日も神原はサッカー部の練習を見ていた。
「ちゅーか毎日見てるだけで飽きないんかね」
「さぁ、どうだろうな」
「なぁ…倉間はどう思ってるわけ?」
「あ?」
ぼんやりとした相槌を返す倉間に、思い切って話を切り出した。
「どうって何がだよ?」
「…神原のこと」
「さあなぁ…あんま喋んねぇから」
「そっかぁー……」
「どうしたんだよ」
倉間がイライラしたように聞いてくる。
「いやさぁ…本当なのかと思って」
「何が?」
俺が気になってること。
サッカー部に入りたいんでもそうじゃなくても、とにかく俺は神原が気になるんだ。
「タバコとかお酒とか、ヤバイ連中と付き合ってるとかいう…」
「そんなの、単なる噂だろ」
俺の言葉を遮る勢いで倉間は言った。
「そっか…」
そんなにはっきりと否定するとは思っても見なかったから、俺の思考回路は一瞬止まりかけた。
「…そーだよなぁ!」
でも
「倉間がそう言うなら間違いないな!」
すぐに動き出した。
倉間は、自分で思っている以上に人のことをよく見てるんだ。
「はぁっ?!あのなぁ…」
その倉間がそう言うんだから、きっと間違いないんじゃね?
「んじゃまた明日!」
「って、おいっ!」
すっかり嬉しくなった俺は、先に見えていた倉間との分かれ道に向かって走り出した。
クラスは違うけど、俺は神原のことが気になる。
もう神原は覚えてないだろうけど、俺は忘れもしない入学式の日。
あの日、俺がサッカー部に入る決意をしたのは紛れもなく、神原の影響なのだから。