俺たちは進み始める
□現在地点A
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<木野秋視点>
お日様園の緑川君から電話があった。
何でも、週に一回は連絡を取る約束だった神原君から、一ヶ月経った今一度も連絡がこないとかって。
『取り次ぎありがとうございました』
「いいのよ、別に」
目を合わせてもすぐにそらしてしまう神原君。
そそくさと階段を上って行ってしまった。
「はぁ」
神原君の部屋のドアが閉まる音がして、私は自然とため息をついてしまった。
神原君がここ木枯らし荘に住み始めて一ヶ月くらい経った。
それでも、神原君とは未だに会話もろく続かないし、笑った顔も見たことがない。
「ヒロト君、電話に出たのかな…」
台所に戻り、皆の夕飯の支度をしながら考える。
「神原君から連絡とってないってことは、きっとまだ…」
神原君のいたお日様園の出身者であるヒロト君。
どうやらヒロト君と神原君は喧嘩してしまったらしい。
らしい、というのは、私もその話は円堂君からチラッと聞いただけのだ。