俺たちは走り続ける
□心配事が多すぎて
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『失礼します』
入学式も終わり、俺がやってきたのは保健室。
『神童まだいますかー…って』
先生いねぇじゃん。
「神原か?」
後ろ手に扉を閉めるとついたての奥、ベッドのほうから聞きなれた声がした。
『あぁ、そうだ。霧野だよな?』
「あぁ」
ついたての奥まで行くと、ベッドに横になり規則的な寝息をたてる神童と
脇の椅子に腰かける霧野がいた。
『神童の様子はどうだ?』
「あぁ。特に目立った傷もないし、本当に気絶してるだけみたいだ」
もうすぐ目を覚ますだろと言いつつ、霧野は俺にもうひとつの椅子を勧めた。
『そうか、よかった』
霧野の横に椅子を並べて座るとつかの間の静寂が俺たちを包んだ。
保健室の中は先生がいないからか、電気がついてなくて薄暗い。
扉を隔てた廊下の生徒の笑い声や足音が
まるで別の世界のもののように響いた。