俺たちは走り続ける
□雷門に吹く新しい風B
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「…勝負?」
「どうした?さっきの発言は撤回するか?」
「しっしない!…や、やるさ!」
「えっ、天馬くん」
音無先生が心配そうに声をかける。
剣城は声を立てて笑うと、
「来な、相手になってやる」
と言った。
2人のやり取りを、久遠監督は静かに見守るだけだった。
「俺からボールを奪えたらお前の勝ちということでいいだろう?」
「え…」
不安そうな顔をする天馬を見て、音無は
「久遠監督、やらせていいんですか?」
と、やはり不安そうな顔で聞く。
「…」
「監督…」
何も答えないのは監督がやらせる気でいるってことだ。
「ボールを取ったら、俺の勝ち…」
「ああ。お前が勝ったらサッカー部の存続を認めよう。その代わり、勝てなければサッカー部はおしまいだ」
松風が考えるような顔をしていると
「金山理事長…止めさせてください!」
音無先生の声に、黄色の目立つスーツの男・理事長が歩いてくるのが見えた。
「いいえ、この勝負認めます。」
「え?」
理事長の言葉に、音無先生がたじろいだ。
「近いうちにサッカー部も改革が必要だと感じていました。新入部員一人に負けてしまう部など存在価値はありません」
冷たく言い放たれた言葉に、一乃の肩が震えるのが分かった。