俺たちは走り続ける
□雷門に吹く新しい風
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「涼、涼…お父さんがね…」
「何言ってるのよ、あの人は死んでなんかないわ?
自分のお父さんをそういう風に言うもんじゃありません」
「死んでないって言ってるでしょ!」
「死んだ?違うわ!殺されたのよ!」
「あなたが殺したんでしょ!あなたのせいで
あの人は死んだのよ!」
「人殺し!返して!あの人を返して!!」
「ねぇ、涼……ごめんね、お母さん、疲れちゃったの……」
振り下ろされる包丁と、母さんの口元に広がる笑み。
響き渡る悲鳴は俺のものなのだろうか。
確かに俺は死を覚悟して、その目を閉じたのだった。
『っーーー!!!』
目を開くと、カーテンの隙間から部屋いっぱいに春の暖かな日差しが差し込んでいた。
息は荒く、寝汗ぐっしょり。
『ゆめ、か………』
枕の横に置いてある目覚まし時計を見ると、予定の時間より10分遅い。
『……ちっ』
軽く舌打ちをすると、俺はベッドから抜け出た。