□No.037〜039
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今はもう亡き都市となった、ここ、カルボクラムへと足を踏み入れた。

果たしてこんなところに紅の絆傭兵団がいるのだろうか。

崩れた建物の隙間などに草木が生え、茂っている。


「こりゃ、完璧に廃墟だな」

「こんなところに誰が来るっていうのよ」

「またいい加減な情報、掴まされたかな…」

「どうだろうね」


あのレイヴンという男はつくづく読めない。


「また………?」

「そこで止まれ!当地区は我ら『魔狩りの剣』により現在、完全封鎖中にある」


頭上から聞こえてくる若い女の声。


「この声…!?」


どうやらカロルは声の主を知っているようだ。


「これは無力な部外者に被害を及ぼさないための処置だ」


上を見上げると、小柄な少女が大きな武器を携えて此方を覗いている。


「ナン!」


それを見つけるとカロルは至極嬉しそうに話しかけた。


「よかった。やっと追いついたよ」

「…………」

「首領やティソンも一緒?ボクがいなくて大丈夫だった?」

「馴れ馴れしく話し掛けてこないで」

「冷たいな。少しはぐれただけなのに」

「少しはぐれた?よくそんなウソが言える!逃げ出したくせに!」

「逃げ出してなんていないよ!」

「まだ言い訳するの?」


雲行きが怪しくなってきたぞ。


「言い訳じゃない!ちゃんとエッグベアも倒したんだよ!」

「それもウソね」

「ほ、ほんとだよ!」

「せっかく魔狩りの剣に誘ってあげたのに……。今度は絶対に逃げないって言ったのはどこの誰よ!昔からいっつもそう!すぐに逃げ出して、どこのギルドも追い出されて……」

「わああああっ!わあああああっ!」

「………ふん!もう、あんたクビよ!」

「ま、待ってよ!」

「魔狩りの剣より忠告する!速やかに当地区より立ち去れ!従わぬ場合、我々はあなた方の命を保障しない!」


そう言い残すと、ナンと呼ばれていた少女は去った。


「ナン!」


カロルは意気消沈したように肩を落としている。

とりあえずそんなカロルの頭を撫でる。

カロルはそれを嫌がる気力も無くなってしまっていた。





………
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