その他

□おもち
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「ねぇ、せんごっくん」
「せんごっくんじゃない、仙石だ」
「うん、せんごっくん」
「おま…いいや、なんだよ」
「レミちゃんの具合が悪そうだよ」

そう言われ、己の恋人を見てみる。
桜と楽しそうに話しているようにしか思えないが。
可愛らしい笑顔を浮かべて、レミはこないだねー、などと近況報告。
ほとんど毎日会っていると言うのに、彼女たちの話題が尽きることはない。
たまに以前の話題を持ってきて、全く同じ事を言っていたりもする。
女というのは分からない。
理解しようとするのが間違い、などと本に書いてあったりもするが、本当にその通りだと、稀に思う。
とりあえず今はそういう事ではなく。レミの体調が悪そうだと。
見る限り、体調が悪いようには。

「根拠は?」

隣に立つ、明るい金髪に問い掛ける。
生徒会室の窓から差し込む光に、きらきらと反射して輝きを放つ。
レミの髪みたいに細くて柔らかな髪質。
そんな、パッと見は外国人に見える彼だが生粋の日本人。
中学時代までを北海道で過ごしていたらしく、寒さには強いが暑さにはとても弱い。
夏の間は宮村くんを視界に入れるのを嫌がる徹底っぷり。

「…根拠って…、こう見えて医大に行くつもりなんだからね、俺。身近な人間の不調くらい気付けないと」
「だから根拠は」
「…顔色悪いって。寝不足かな」

淡々と会話をしていく。
今一度、レミを見る。
言われてみれば、なんとなく、桜と比べて蒼白い気がしないでもない。
俺の視線に気付いたレミが、こちらに向けて手を振ってくる。

「今日もレミちゃん可愛いねぇ」

律儀に手を振り返した、この見た目外国人がレミを大切に思ってくれていると知ったのは最近のこと。
それは男女の関係ではなく、友情のもの。







 
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