RЯ(小説)

□Sweetness
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「ねぇリカルドぉ」

少女の可愛らしい声が響く。
振り返るとやはり少女。
耳の下で結んだ髪は可愛らしく、見る人が見れば可愛いのだろう。

「買い物付き合って?」
「断る」
「ラウラに許可は貰ってるよぅ」

ぷう、と頬をわざとらしく膨らませて拗ねて見せる。
そんな顔をしてどうする。
嫌悪の表情を露にして、少女に背を向けた。
すると目の前に、ラウ姉。

「今日1日暇をやる、行ってこい」

ラウ姉に言われてしまったら、行かざるを得ない。
どうせただの荷物持ちだろう。
大きな溜め息をついて、承諾する。
うしろではしゃぐ声が聞こえてさっそく嫌になった。




「ねぇリカルド?」

女物の服の店。
近くの目立たない所に車を止めて、街を歩いてる最中にメーラが入りたい、と言った。
名を呼ばれ振り返ると、可愛らしい服を二枚、両手に持ってこちらを見ていて。

「どっちが似合うかな?」

楽しそうに目を細めて笑う。
知らねぇよ、と言ってやろうかと思ったが、俺にも好みという物があるわけで。
俺はそっちが好きだ、と言ってみると目を真ん丸にして驚いた。
 
「、あ、えと、そっか…、メーラもそう思う、うん…」

なぜだか戸惑うメーラ。
なんだよ…。

「じゃあ着てみればいいんじゃないか?」

すると少女はもごもごと何か言って、そのまま試着室に逃げ込んでしまった。
だからなんなんだよ。
まったく。
腕を組んで、辺りを見回す。
場違い感は否めないがもう諦めた。
無意識に溜め息が出る。
この後メーラの奴と飯食いに行くか…、などとぼんやりプランを立てる。

確かにメーラは可愛いと思う。
可愛くて愛らしい。
だが、メーラが俺に向ける感情に応える事などできない。
社会的に見て。
彼女がもう少し、大人だったら。
世界がもう少し、平和だったら。
ああなんてバカみたいな考え。
こんなこと考えても何も変わらないのに。
どうして、とか、

「ねえリカルド、…どう?」

試着室から聞こえた声に思考を中断する。
声の主、メーラを見れば。

「可愛い?」

さっきの戸惑いはどこへ行ったのか、ふざけてみせる。
ふっ、と鼻で笑い、感想を言ってやる。

「あぁ、似合ってるぞ」

少女はぼふん、と音がしそうなくらい一瞬で顔を真っ赤にしてしまう。
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