主
□俺の心臓を貫いたのは貴方
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人の気配
鉄の匂い
血の味
その三つを同時に感じた瞬間、俺は突然目の前に現れた男から心臓部分を貫かれたことを理解した。
刀が俺の体から引き抜かれてやっと痛みを感じる。
俺を刺した、真っ黒なサングラスが印象的なこの男の顔は以前写真で一度だけ見たことがある。
高杉晋助率いる過激派攘夷集団「鬼兵隊」の幹部クラスであろうこの男
河上万斉。
サングラスが眼を隠している所為で、表情が読み取れない。
ドクドクと血が体内から出ていくのが分かる。
あぁ、俺、死ぬのかな。
覚悟はあった。
自分だって沢山の命を奪ってきたんだ。
誰かに命を奪われる事なんて安易に予測できる。
ふいに足音が聴こえて外に意識を向けると、伊東と一緒に数人の隊士が現れた。
今日も昨日も一昨日も、それよりずっと前から一緒にいた奴もいた。
嗚呼、結局こいつらの意思はこの程度のものなのか。
こんな奴に唆される程弱かったのか。
悲しみよりも先に込み上げてきたのは怒りだった。
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