鋼の錬金術師

□第23話
1ページ/2ページ






「ん…」




「お目覚めか。お姫様」




「…エン…ヴィ……?」








目を開くと両手を縛る鎖が視界に入った







「おーおー妬けるねぇ。クロアがエンヴィーのもんになってたなんて初耳だぜ?」







クロアはゆっくりと身体を起こすと目の前にはグリードがいた





「…強欲のグリード……変な事言わないで…私はエンヴィーのものじゃない…っ」





睨みながら言うとグリードは口角を上げクロアに近づいた












「なら…俺のものになるか?」





「は……?何言って―――!」












そうクロアが口を開いた瞬間唇が押し当てられた





「んんっ!!」





クロアが胸板を強く押すとグリードは直ぐに離れた







「っ……!」






「今のであんま動揺してないって事はファーストキスはあいつか?」







その言葉を言われた瞬間クロアは耳まで赤く染まった







「……っんのやろ…っ!」






「がっはっは!気の強い女は好きだぜ?あいつには勿体ない。だがそんな風に睨んでも逆効果だ。やめとけ」







クロアは落ち着き無言で立ち上がると両手を縛っていた鎖が足元に落ちた








「…ムカつくから一回くらい殺されてよ」




「ノアの錬金術か…」








部屋の空気が重くなる





先に動いたのはクロアだった







パキッ







クロアが動くのと同時に風がグリードを襲う





「やっぱり速いな…だがその錬金術、一つ弱点あるの知ってるか?」



「……さあ」





かろうじで攻撃を防ぐグリードはクロアの目の前にあるもの突き出した









「…っ!?…な…んで……」






「覚えてるか?これ」










突き出されたのは赤いリボン





クロアはそれを目にした瞬間目を見開いた







「そ、れ…だって……」







グリードは後退りするクロアの両手首を掴み片手で壁に押さえ付けた







「…っ」




「動揺して集中力を失うと錬金術を使えなくなる。ノアが教えてくれたんだけどな」







いつの間にか風はどこにもなく元の静かな部屋になっていた








「…っ!」




「お?」








それでも無理矢理風を操るが小さな風はグリードの頬を切るだけだった







「無駄無駄。なんたって賢者の石を核にしてんだから」




「…!」







パキパキと傷が塞がるのを見てクロアはグリードを睨んだ







「…やっぱり………お父さんと人造人間との関係は何…?それにそのリボン…何でグリードが持ってるの?」







小さくクロアがそういうとグリードはにっと笑った








「…知りたいか?」















例え真実が残酷だとしても














バキッ!!










クロアが答えようとした時扉が吹っ飛び黒を纏った男が入って来た








「お父様の集合無視して何やってんの?」




「…王子様の登場かよ」








扉を壊し入って来たエンヴィーは今の状況を目にし眉間に皺を寄せた







「…クロア返して。なんかしたら殺すよ?」







「がっはっは!それは悪かったな。











       もう”なんかした”後だ」









グリードがそう言いながら空いている方の手で自分の唇に触れる





その瞬間エンヴィーの目付きが変わった








「…今すぐぶっ潰してやるよ…!」





「おいおい…俺は今お前とやり合うつもりはねぇんだわ。親父殿のところいくんだろ?」








そういうとグリードはクロアの両手を掴んでいた手をぱっと離した



エンヴィーはそれを見るとグリードから解放されたクロアに近付く







「エン…―――っ」







近づいたかと思うとエンヴィーはクロアの両手を壁に押さえ付け口を塞いだ





「んっ…!んん…!!」





クロアはどうにかエンヴィーから離れようとするが手も顔も動かせずにいた





「…ん……っ…ふ…っ!」





立っているのも限界になり壁に押さえ付けられたまま床に落ちていった





それに合わせエンヴィーも屈みクロアが床に座り込んだところでやっと唇を離した





「…げほ…ごほ……っ」




「平気?」





真っ赤になりながら酸素を求めるクロアにさらりとそういうとエンヴィーはグリードを睨んだ







「またクロアに手出したら次こそ踏み潰してやるよ」




「恐ぇ恐ぇ…だが俺は強欲だぜ?」







言い争いになる前にクロアは二人に言った





「…2人とも…お父様のところ、行くんでしょ…?」





クロアがそう言うと二人は睨め合いをやめエンヴィーは重い口を開いた












「…クロアが知りたいことはお父様が1番知ってるよ」












クロアの目に戸惑いはなくなっていた




































「お父様…」




「…クロアも来たか」





お父様は私をみてそう言う





「…私お父様に聞きたいことがあります」





前から薄々気付いていたんだ









”ロードの子か…!”




父を知る者達






”クロアのお父さん賢者の石を持ってたかもしれないんだ”




賢者の石を持つ父






”ノアが教えてくれたんだがな”




賢者の石を核にしている人造人間









さっきのグリードの言葉で答えにたどり着いてしまった








認めたくなくて目を背けてきた








父と人造人間の関係














「お父さんは…
















   お父様達の仲間ですよね…?」












声が震えた










「…そうだ。ノア・ロードは賢者の石を与えた私たちの仲間だ」










お父様の言葉に胸が苦しくなる







「やっぱり…そう…だったんだ…」







私の声は今にも消えそうなくらい掠れた声だった





「じゃあグリードが持ってたリボンもお父さんから…?」







お母さんが死んだあの事故の日



私がつけていた







「…あれは俺が拾ったんだ」




「グリードはあの事件の場にいたの……?」





グリードは黙って目を反らすだけで答えようとしなかった







「あれは…事故じゃない…」







代わりに答えたのはエンヴィーだった







「……事故じゃ…ない…?」








「リフェ・ロードは…















    俺達が事故に見せかけて殺した…」
















ドクン














殺した?







お母さんを?







誰が?







エンヴィー達が?








何故?








「なん、で…」





「ロードがそれを望んだからだ」








お父さんが






死んでほしいと望んだ…?








「ノアからは自分の娘は殺すなと言われていた」







”クロア。今日一日これをつけていなさい”







「あの赤いリボンはノアの娘という目印だったんだ。クロアを店から救出した時に取れて、それを俺が持っていた」





お父様、エンヴィー、グリードから聞きたくない言葉が次々に吐き出される







「…お父さんが…そんな…」







私はエンヴィーを見た








「なんで…?お母さんが何かしたの…?」





「ノアにとって邪魔だったから」













『邪魔だったからだ』












エンヴィーの言葉が誰かの声と重なる














『人体錬成なんて…馬鹿な事を…!』













ズキンッ








突然の頭痛にクロアはしゃがみ込む







またこの頭痛…







クロアは激痛に目をつぶった







きっと次目を開いたときは違う空間にいる







そう思ってるとさっきまでしなかった声が目の前から聞こえた














「来るの早いな。もっと遅いと思ってたんだが…」














目を開くとやはりあの時と同じ白い空間と人型







「真理…」





「…約束だ。ちゃんと返すぜ」





「ねぇ…私と真理がした約束って何…?」







真理はにぃと白い歯を見せた







「その記憶はまだ返せない。また今度だ」







ぎいっと鈍い音と共に扉が開いた





扉から伸びる黒い手はクロアを扉の中へ引きずり込む









「思い出してこい。父親が家を出ていったあの日からを」















Next あとがき

次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ