鋼の錬金術師

□第20話
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「一昨日ぶりー」




「…エンヴィー…」






朝から一昨日も見たエンヴィーを見るなんて思いもしなかったクロアはおもいっきり顔を引きつらせた





「あれ?嬉しくないの?」




「…いや。朝からエンヴィーの顔見て嬉しいわけないでしょ」





そう言ってクロアは身体をエンヴィーとは反対に向き変える







「クロアは素直じゃないよねー」







そういきなりエンヴィーは後からクロアに抱き着くとクロアは顔を赤くし慌て出した






「わっ!ちょっ!!離せっ!!!」






「離す訳無いじゃん。好きなんだから」







耳元でそう言われクロアの顔はさっきよりも真っ赤に染まる





「ばっ…!て、ていうか何なの一昨日から!き、き…」










「キスしたり?」










「言うな阿呆っ!!!!」





真っ赤になったクロアはエンヴィーを殴ろうとしたが楽にかわされてしまった







「さっきも言ったけど好きだからだよ?」



で、用件は






見事なスルーに流石のエンヴィーも肩を落とした





「……今日は忠告をしにきただけだよ。最近東部に傷の男って呼ばれてる国家錬金術師殺しがうろついてるから気をつけてねって」





「傷の男?」





「素性がまったくわからないからそう呼ばれてるみたい。頭に大きな傷があるから」





そういいながらエンヴィーは空中に指でばつ印を書いてみせる





「それはそうとクロアさ…」





エンヴィーはクロアの顔を覗き込む




















「記憶思い出したくないの?」



















「!!そんなわけっ…」










「じゃあなんで調べないの?





















    イシュヴァール殲滅戦のこと」



















クロアはその言葉にびくっと肩を震わした





「クロアも薄々噂とか聞いて気付いてるんでしょ?ノアがイシュヴァール殲滅戦の時誰といたのか」






「っ…私は…!」






「クロアは自分の都合の良い記憶だけ思い出そうとしてるだけ。思い出したくない記憶は思い出そうとしない。逃げてるだけだよクロアは」




















「ちがっ…!」






















「クロアちゃん!」










突然のその声に驚き振り向くとそこに





「リザさん…!」





「…どうしたの?」





ちょうど指令部から何処かへ向かおうとするリザさんがいた





「いや………あれ…」





しかしもう一度エンヴィーがいた方向を見渡すが既にエンヴィーはいなくなっていた





(エンヴィー…)





「大丈夫?」





そういいリザさんは顔を覗いた





「あ、はい…リザさんはこれからタッカーのところですか?」





「…ええ」





リザさんは少しトーンを落としてそう短く言った










そうタッカーは昨日死んだ







娘と犬の合成獣と共に










「じゃあ私エド達探しに行きます。へこんでそうだし」





「そう。エドワード君達なら大通りの方に向かったわよ」





「はーい」





私はそういいリザさんと別れた










傷の男







国家錬金術師ばかり狙ってる殺人犯







さっきエンヴィーの言っていた事が本当なら…









「タッカーが殺されたなら、このへんで次狙われるのは大佐か私か…」












ドオオオンッ!












「エド」





大きな音がした方に私は走り出した





時計台に着くと憲兵が死んでいるのを横目で見たクロアは急いだ









「兄さん!!!!」









アルの声が聞こえる方に向かうと機械鎧を壊されたエドと鎧を半分ほど失ったアルがいた





そしてもう一人の男が右手をエドの頭へと近づけている





クロアはその光景を目にし飛び出した












「待った!!!」












「!!」





「「クロア!」」






エド達はクロアを見て目を丸くしていた







「クロア逃げろ!こいつは人を殺…」





「知ってる。だから何?死にたいの?」







クロアはエドを睨みそういった後傷の男を見た












「私が相手になってあげるよ。エドは絶対に殺させない」








「貴様に用はない。あるのは鋼の錬金術師エドワード・エルリックだけだ」












スカーがそう言うとクロアはにっと笑い銀時計を突き出した







「風の錬金術師。私も国家錬金術師だよ」





「…!!」





「ああ。やっぱり本当の名を言っとこうか」







クロアは銀時計をしまうともう一度スカーを見る












「特別に教えてあげる。”風”は表向きの名。私の本当の二つの名は…













    ”風葬”















   風葬の錬金術師。クロア・ロード」














「「「!!!」」」

















その瞬間風が止んだ





まるでクロアが全ての空気を支配しているような感覚でその場にいた全員が息を呑む









「風葬…クロア・ロード……お前…あの時の娘か!」









静まり返った世界で言葉を最初に発したのはスカーだった








「…あの時?」









「己を助けてくれたのはお前だったな」









ズキンッ







「っ…!」





突然クロアに頭痛が襲った





ふらつくクロア向かってスカーは駆け寄った














ドン














その時一発の銃声が鳴った









「それ以上クロアに近付くな」





「大佐…」









銃弾を空に撃ち込んだのはロイだった





後にはハボックとリザもいた







「大佐!こいつは…」





「その男は一連の国家錬金術師殺しの容疑者…だったがこの状況から見て確実になったな。タッカー邸の殺害事件も貴様の犯行だな?」







ロイがそういうと”タッカー”という単語に反応しエドはスカーを睨み付けた





ロイもスカーもお互いに睨み付けながら会話は進む





クロアはその間も頭痛で意識が朦朧としていた










ドン




ドン




ドン




ドン




ドン!










5発の銃声を聞きクロアは顔を上げた





顔を上げるといつの間にかアームストロング少佐も戦いに加わって



ちょうどリザがスカーに向かって弾を撃った所だった







「やったか!?」





「速いですね。一発かすっただけです」







リザの言ったとおりこめかみ付近をかすっただけであったが彼のかけていたサングラスは落ち










赤い目がこちらを睨みつけた











「褐色の肌に赤目の…!」







「イシュヴァールの民か……!!」







「!!」















真っ赤な真っ赤な目










あの目を私は知っている



































クロア。父さんの言うことを聞けるか?







うん







じゃあクロア









イシュヴァールの民を…


































『イシュヴァールの民を殺せ』














































「!」





目を開くと一面真っ白な世界だった







「ここ…どこ…」





「よお!」







その突然の声に跳ね上がる





「だ、誰…?」





私はその白い空間に浮かぶ人型に話しかけた










「俺の”初めての友達”であり、お前の”初めての友達”だ」










そう言うと人型の後にあった大きな扉が開いた

















「約束通り返してやるよ。記憶の一部を」



















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