鋼の錬金術師

□第18話
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「ふあ〜」





「随分と暇そうだな君は」





「暇ですもん」











クロアが戻って来て何日か経った日のことだった






「要求は現在収監中の彼らの指導者を開放する事」





「ありきたりだな。で、本当に将軍閣下は乗ってるのか?」





「今確認中ですがおそらく」





ファルマンがそう言うとロイは困った顔をした







「困ったな。夕方クロアとデートの約束をしてたのに」







「した覚えないんですけど」






クロアがはっきりそう言った







「まぁたまには俺達と残業デートしましょうやー」







ブレダがそういうとロイはどうにかさっさと事件を片付ける方法を考えていた






フュリーが乗客名簿をロイに渡すとクロアとハボックが覗き込んだ







「あー本当に家族で乗ってますね。ハクロのおっさん」





「まったく…東部の情勢が不安定なのは知ってるだろうに、こんな時にバカンスとは…」





「それで人質とか自業自得ですね。ていうか笑えます」









そうきっぱりクロアは言う





クロアにとって特定の人以外はどうでもいいようだった







ロイが乗客名簿を見ているとある名前を見つけた












「ああ諸君。今日は思ったより早く帰れそうだ




   鋼の錬金術師が乗っている」







「エド…?戻って来たんだ」












ニヤリと笑うロイを見てクロアはそう言った





「鋼のも君に会いたがってるんじゃないか?」





「まさか。そんな理由が何処にありますか」







クロアはそう言う




それ聞きロイはエドを同情した







(クロアは鈍いからな…鋼のがクロアの事好きなのはほぼ皆気付いてるのに…)








「まぁ何にしろ私はエドにそこまで会いたくないんですけど。煩いし、豆だし」









ロイはこの時から本当にエドが可哀相な奴だと思うようになったのを









エドは知らない















「大佐。特急○四八四○便がそろそろ着く頃かと…」





「わかった。では鋼のを迎えにでも行くか」























































































「や、鋼の」





ロイが手を上げそういうとエドはあからさまに嫌そうな顔をした





「あれ、大佐。こんにちは」





エドとは打って変わってアルは普通に挨拶をしていた





「なんだね、その嫌そうな顔は」




「くあ〜〜〜〜。大佐の管轄なら放っときゃよかった!!」





前髪を無造作に掴み不満オーラを思いきりだしていた











「とか言っても放っとけないタイプでしょ。エドは」











ロイの後からひょこっと顔を出したクロアをみてエドもアルも目を丸くした











「「クロア!!」」






「やあ。元気そうで残念だよ」











余りの驚きでクロアのその言葉を深く考えなかった2人だが










(あきらかに酷い事言っている…。)










そう思うのはその近くにいたロイとリザくらいだった






「東方司令部に戻ってたのかよ!」





「何も理由言わずに行っちゃうから心配したんだよ!」






ロイは2人の言葉に何か引っ掛かった






「…何も…言わず?」





「気にしない!気にしなーい!!」






冷汗を流しながらクロアは必死に気を反らそうとしていた





しかしそんな行動もむなしくロイは違う方へ気を向かせた








「うわぁ!!」





「貴様…ぐあっ!!」









その声のする方をみると右目に眼帯をした人物が仕込みナイフで軍人を切り付けた様子だった






「うわ」




「大佐。お下がりくだ…」






リザが銃を構えるがロイはそれを止めた






「これでいい」




「…なら私が援護してあげます」






ロイとクロアはお互い目を合わせ一歩前に出た







「おおおおおおおお!!!」






バルドが2人目掛けて走りだすとロイは華麗に指を鳴らした






パキン






それと同時にクロアは右手を前に突き出し








「ばぁーい」








そう短く言うと炎が風に乗り一直線にバルドに向かった






周りから見るそれは炎の龍がバルドに向かって突っ込むようにも見えた






「あ、やば」




「!!」






炎の龍はバルドにぶつかる寸前で爆発しバルドは吹っ飛んだ








「あっぶな。そのまま突っ込みそうだった…っ」





「手加減したまえ…まぁまだ逆らうというなら次はケシ炭にするが?」








そういいながらバルドに近寄るロイとその後に立つクロアを睨み付け








「ど畜生め…てめえら何者だ!!」








バルドはそう聞いた










「ロイ・マスタング。地位は大佐だ。そしてもうひとつ





         『焔の錬金術師』だ。覚えておきたまえ」









「私は『風の錬金術師』クロア・ロード。ついでに軍人じゃありませんよー」











ニッコリ笑いながら言うクロアを見てバルドは「こんな餓鬼が」と呟いたあと憲兵達に連れていかれた
































「うは…すげーなこりゃ……」






炎の通った跡と爆発した跡をみて憲兵は言った






「ああ、大佐とクロアのあれ見るの初めてか」





「あ…ハボック少尉」





「いったいどうやったらあんな事できるんですか!?」






ハボックはライターをポケットから出しながら話した






「大佐の手袋は発火布っつー特殊なのでできててよ。強く摩擦すると火花を発する。


   あとは空気中の酸素濃度を可燃物の周りで調節してやれば…




  『ボン!』だそうだ」





煙草にライターの火を移すとひと吹きしクロアを見た






「で、クロアは風、つまり空気を操る。原理は俺も良く知らねえ。クロアの操る風に大佐の炎を乗せればさっきみたいに炎の柱が突っ切る」






「理屈はわかりますけどそんな…」






「それをやってのけるのが錬金術師ってやつよ。ちなみにとなりにいるちっこいのも国家錬金術師だぞ」






それを聞いた憲兵達は目を丸くした








「え!!じゃあ、今回犯人全員捕り押さえたのって……」






「信じられんな……」






「ああ…人間じゃねえよ…」








そう呟く憲兵達だったがその時突然の声に息を呑んだ










「私達は人間ですよ」










「クロア殿っ!も、申し訳ありません…!」








びしっと背筋を伸ばし敬礼する憲兵








「…兵器だとかバケモノだとか言われても…人間なんです。…弱くて小さな…」








目線を落としどこか悲しい目をして言うクロアにハボックが声をかけた






「ほらクロア。大佐達行っちまうぞ」






そう言うとクロアはすたすたと大佐達に着いていった






「少し…軽率でしたね…」






「人間兵器だなんて言われてても…まだ子供だからな…あいつらは」






ハボック達はその小さな背中を見送った
















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