鋼の錬金術師

□第17話
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「ただいまかえりましたー」



「ごふっ」



「きたなっ!」





ロイは飲んでいた珈琲を吹き出した





「クロア!いつこっちに戻ってきたんだ!」





「さっきです」





ロイはこぼした珈琲を拭きながら聞いた





「…鋼のはどうした…?」



「旅してますよ?」



「何で君だけ戻って来たんだと聞いているんだ!」





珈琲を拭いたタオルをクロアに投げ付けるがクロアは軽々かわした





「…用事があったので戻ってきました。エド達は先に東部の方回ってます」





「…そうか…で、用事っていうのは?」





クロアはかわしたタオルを拾い上げロイを見た





「大佐、今日家に帰りますよね」





クロアはロイの目の前に紙袋を突き出した









「シチュー」



「は…?」
















































「本当に君は突然過ぎる……」





「まぁ良いじゃないですか」





ロイの家で料理を始めようとするクロアはそう言った





「全然良くないんだが」





「あ、あとお願いがあるんですけど」





エプロンを付けて出て来たクロアは笑顔で言った










「またしばらく泊めてください」










「…………すまない。聞き間違えたようだ。もう一回…」












「またしばらく泊めてください」












ロイはその言葉を聞いて固まる





「……本当になにもかも突然だ…」





キッチンへまた戻っていったクロアを見ながらそう言い


頭を押さえながらロイはしばらく黙っていた







がしゃんッ





「!」







突然鍋の落ちる音がしてロイは慌ててキッチンへ向かった





「…っ」





「クロア!」





クロアは熱湯を被ったようでロイはすぐさま風呂場へ連れていき冷水をかけた





「つめたっ!」




「馬鹿者!!!」





ロイの怒鳴り声でクロアは目を丸くさせた







「前にもあれほど気をつけろと言ったというのに!ぼーっとしているからだろう!!火傷でもしたらどうする!!」







ロイの怒鳴り声に圧され目を丸くさせたままのクロアも素直に謝らざるおえなかった






「…すみません…」




「…はぁ……火傷は?」






ロイは水を止めクロアの腕を見ながら言った





「大佐の処置が早かった為、腕と腿の軽い火傷で済みました」





ロイがタオルを渡すとクロアは風呂場から出て体を拭いた





「君は熱湯被った後もぼーっとしてたからな」



「うっ…」



「また考え事でもしてたんだろう」



「ううっ…」



「何をそこまで考えてたんだ」



「た…大佐泊めてくれるかなぁ…と…」



「嘘だな。クロアは私の意見など聞かず勝手に泊まろうとする奴だからな」



「うぐっ…」



「図星か」



「あ、いや…あ…う…」










「さっさと話せと言っているんだ!!」










ロイが大声を出したかと思うと







ガンッ







「――っ!」







クロアは鍋の蓋をロイの頭目掛けて投げ付けキッチンから逃げ出した










「っ……ほう…そんなに消し炭になりたいか…」










そして鬼ごっこが始まった













―リアル鬼ごっこ in ロイ宅―













「ちょっ!待ってください!冗談ですって!発火布つけないでください!!」





「冗談で鍋の蓋を顔面に投げる奴がいるか!」











クロアはちょこまか逃げ回りロイの目を欺いた瞬間一つの部屋に入った





「あれ…この部屋…」





入った部屋にクロアは見覚えがあった





「変わってない…」





その部屋は昔クロアが使っていた部屋で使っていた時と家具も部屋の雰囲気も変わっていなかった



しかしもう誰も使ってないはずなのに部屋は綺麗に掃除されていた





バタンッ





急に後から扉の閉まる音がして振り向くとそこにはロイが立っていた






「やっと追い詰めたぞ」




「げっ…」






ロイはクロアの肩を掴んでベットに放り投げた





「ふぐ…っ」




「………はぁ…」





深く溜息をつきながらロイはクロアを放り投げたベットに座った










「クロア。私に何を隠している」




「…っ!」








「私が気付かないとでも思ったか!」


















…ああ


やはりロイには隠し切れない







たった3ヶ月一緒に住んでただけだけど






こんなにも心配してくれている


こんなにも想ってくれている


こんなにも私の帰りを待っていてくれる








本当の家族のような存在







ロイを護るためなら何でもする








だから







帰れない







私は







ウロボロスの刺青を持つ敵になったのだから








だけど今だけは











お願い























傍にいさせて
























「ロイ…っ」






「…君はホントに泣くのが下手だな」








目に涙を溜めるクロアをみてロイは微笑んだ






「…今日戻ってきたのは今ロイに会わなきゃ会えない気がしたから…」




「…そうか…」






ロイはそれだけ言うとクロアの頭に手を乗せた





「…何も…聞かないの…?」




「聞いても答えないんだろう?」





そう少し悲しんだように眉を下げて言った





「…ごめん。今はそれしか言えない…」









”また悲しませている”









そう思うと胸が痛んだ





そっとロイを見るとロイは優しく笑ってくれた








「さて、腹が減ってきたな」




「…あ…………え…………。」








大佐のその言葉に私は今まで完全に忘れていたあることを思い出した
















「た、た、大佐のばかぁぁぁああ!!!!大佐のせいでシチューの鍋火にかけっぱなしですよ!!!!」







「わ、私のせいかね!!」














そう言った後私と大佐はキッチンまで走り出した







「確かにさっきっから焦げ臭かったような…」










「今更言うな無能っ!!」





「なっ…」











落ち込む大佐を無視しキッチンにつくと私は自分の目を疑った





「これは酷い…」





鍋は真っ黒でシチューとかそんな話ではない





「また一から作り直せばいいではないか」





「ふざけんなよこのやろう」





「…さっきまでの素直なクロアは何処へいったんだか」





「何かー?」





真っ黒な笑みで言うと大佐は目を反らした





「大佐のせいなんですから大佐も手伝ってください」





「私は愛情たっぷりの料理待って…「殺しますよー」



…包丁持ちながら言わないでくれ…」





時間も忘れるくらい楽しく料理を作っていた










いつかこんな楽しい時間も終わってしまう













「ロイ」













だからとびっきりの笑顔を貴方に…






















「ありがとう」














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