鋼の錬金術師

□第16話
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「泣きそうな顔してるよ」





「う、うるさい!誰が泣くか!」





少し顔を赤くしたクロアをみてエンヴィーは言った





「泣いてたじゃん」



「は?いつ?何処で?理由は?」







「……昨日。ホテルで。さみs
「うわぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」







エンヴィーが最後まで言う前にクロアは真っ赤になって止めた





「ななななな、なんで…知って…イヴしか…」











「俺がイヴだから」











ぴしゃん





クロアの中に稲妻が落ちた





「な、なにい……え?」











「だーかーら。イヴは変身した俺だって」











ぴしゃん





二度目





「え…じゃあ…」







「あ、あとイヴって名前俺k「わわわわ!!!ま、待った!待った!それ以上喋るな!黙れ!!」







みるみるうちに沸騰していくクロア





「……うそ…だ…」





耳まで赤くなったクロアはしゃがみ込んで唸っていた







「大丈夫だって。誰にも言わないからっ」







「…そういう…問題じゃ……そういう問題じゃなーい!!!」






赤く茹だった顔をばっと上げエンヴィーに怒鳴る










「誰にも見られたくなかったのに…。こんな弱い自分…見られたくなかった…っ」










そういってすぐに顔を伏せた





エンヴィーはその様子をただ見つめていた







カツンッ







そこへヒールの音と共に女性の声が響いた








「あなたたち何をやってるの?」








「ラスト…!」





「………ラスト姉?…ラスト姉!」







クロアはパタパタとラストの元へ駆け寄っていった





「あら。クロアもきてたの?」





「うん。あ、グラトニー」





「クロア〜ひさしぶり〜」





その様子はさっきまで俯いていたクロアと別人のように明るく振る舞っていた





それを遠くからエンヴィーは眺めていた











何故





そこまで耐えるのか






なんで辛いとも言わず





泣くことも堪えて





弱い自分を隠して











耐えて

















「耐えて…何になるっていうの」






「………」














思わず口に出てしまった





クロアは答えない代わりに









微笑んだ







綺麗な







今にでも泣きそうな







悲しい顔で









その笑顔はエンヴィー目に焼き付いた







グラトニーは「なんのはなし〜?」とクロアに聞くがクロアは「秘密」と笑って言った





エンヴィーはそれ以上クロアに聞き出そうとは思わなかった







「おで、クロアすきー」




「あはは!私もグラトニー好きだよー」




「きっと食べたらやわらかいんだろうなぁ〜」




「え゛」





グラトニーとクロアが仲良く話している中




ラストはクロア達とは離れた場所にいるエンヴィーの方に近付いていく








「すっかり仲良しね。あの二人」





「そう?グラトニーなんてただクロアの肉が食べたいだけなんじゃないの?」








「あら…グラトニーに嫉妬してるの?」








ラストがそうクスクスと笑いながら言うとエンヴィーはぽかんと口を開けたままだった





「…は?」




「……あなた自分の名前忘れたの?」




「いや、そうじゃなくて。何でグラトニーに…」








「…あら、クロアのこと好きなんじゃないの?」








ラストのその言葉に目を見開いた








   俺がクロアを




          好き…?








「違うの?クロアが仲間になってから毎日楽しそうにしてるからそうなのかと思っていたのだけれど…」













ああ






そうか






やっとわかった










嫉妬したり、傍にいたいとか、






笑顔をみたいと思うのは






俺がクロアを好きだから










そうだ






嬉しかったんだ









人造人間だからといって化け物なんて思わないで






普通に自分の前で






笑ったり、怒ったり、恥ずかしがったり、落ち込んだり、泣きそうになったり






そうしてくれることが










嬉しかった










そして






俺は人造人間でありながらそんなクロアを好きになっていたんだ













「まさか…ラストおばはんなんかに気付かされるなんて…」





「あなた自覚なかったの…」





ラストは溜息をついた









「でも…忘れないで。クロアはいつかきっと私達を恨むわ。








   クロアの母親を殺したのは私達なんだから」










「………わかってるよ」







エンヴィーは目を細めた





クロアを見つめながら







「いずれ知って私達の敵になるというなら…」





「……………」







ラストがそこまで言って黙った




エンヴィーはラストが何を言いたいのか分かって同じように黙っていた





「…あれ、ラスト姉…街の人達が」





ふと窓を覗くクロアがそういうとラストはクロアの方へ近づき同じ窓を覗いた





「…やっと騙されてたことに気付いたのね」




「だまされた〜」





さっきまで穏やかだった街は混乱に陥っていた





「それじゃあ私達は行くわね。仕事に戻らないと」




「ああ…」




「行くわよ。グラトニー」





そういうとグラトニーはラストに続いて外へ出て行った





取り残された二人は2人が出ていった入口をずっと見つめながら黙っていた







先に沈黙を破ったのはエンヴィーだった








「ノアから俺達のことなんて聞いてる?」




「……エンヴィー達のこと?」







そう聞き返すがエンヴィーはなにも答えなかったので多分そうだろうと思い話した








「人間と同じように感情がある。色欲、暴食、強欲、傲慢、憤怒、怠惰、そして嫉妬…



七つの大罪が名前になってる…不老不死、真理に1番近い…とかなんとか」







「…肝心なことは言ってないわけね…」








小さく呟くエンヴィーの声はクロアには届かなかった









「私もエンヴィーに聞きたいことある…」









クロアは俯きながらエンヴィーに聞いた














「お父さんの…研究って………」


















「知りたい?」
















びくっとクロアの肩が震える





しかし少しの間黙ってすぐにいつもの顔をあげた









「ううん。やっぱりいい…




  自分でたどり着かなきゃ意味がない」









そうクロアは笑った









ホムンクルスは賢者の石と何かしら関係がある





あとはお父さんと記憶







もう少し…


















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