鋼の錬金術師

□第15話
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『この地上に生ける神の子らよ…』





「……ラジオで宗教放送?」





「神の代理人…って」





「なんだこりゃ?」







アル、クロア、エドの順で話していると店の人は眉を寄せていった





「いや、俺にとっちゃあんたらの方が『なんだこりゃ』なんだが…あんたら大道芸人かなんかかい?」









ごぶばっ







「うわきったな」










飲み物を吹き出したエドに向かってそうクロアは言い放った





「おまっ……あのなおっちゃんオレ達のどこが大道芸人に見えるったんだよ!」





「いやどう見てもそうとしか…」








「まぁそう見えるのが正しい」







アルが回りの人達から注目を集める中話は進んでいった





店にいた人達がコーネロという教主の話をしているにも関わらず


エドとクロアはつまらなそうにしていた







「…って聴いてねぇなボウズ達」





「まーた神っていうんだからねぇ…?」





「ああ…オレ達宗教興味ないし」





明らか様にめんどくさそうな顔をしてエドは言った





「ごちそーさん。んじゃ行くか」





「うん」





そう言ってアルが立ち上がるとその大きな体はぶつかった







ごち







そして落ちてきたラジオは音を立てて壊れた







バゴ







しかしエドは焦りもせず怒った店のおじさんを落ち着かせた





その間アルは錬成陣を書き準備が出来たところでラジオを錬成した







「これでいいかな?」







エドは直ったラジオを指差す





『汝が神の言葉を受け入れ神についての知識を…』







「あんた『奇跡の業』がつかえるのかい!?」







「なんだそりゃ?」







目を見開いたおじさんにそう言う







「ボク達錬金術師ですよ」





「エルリック兄弟って言やぁ結構名が通ってるんだけどね」







そうエドとアルが言うと回りの人々はざわつき始めた





「兄の方がたしか国家錬金術師の……」










『鋼の錬金術師”エドワード・エルリック!!』










小さくYESとエドが言ったのにも関わらず予想通り皆アルと間違えている






「いやぁあんたが噂の天才錬金術!!」




「なるほど!こんな鎧を着てるからふたつの名が”鋼”なのか!」




「あのボクじゃなくて」




「へ?」




「あっちのちっこいの?」






その言葉を聞いた途端エドはいつもどうり大爆発した









「誰が豆つぶドちびか―――ッ!!!」









この時クロアは思った







(エドってつくづく可哀相な役目だな)















「ボクは弟のアルフォンス・エルリックでーす」





「オレが!”鋼の錬金術師”!!エドワード・エルリック!!!」







「し…」



「失礼しました…」







人々は青ざめた顔で謝る





そこまでコンプレックスなのかと思いながら





「それで…お嬢ちゃんは?」





その場にいた人々の目線はさっきからあまり喋っていないクロアに向けられた







「私は…クロア。そこのチビと一緒に旅してます」








「喧嘩売ってんのか?」








「いーえ」







そんなふうに話をしていると女性の声がこっちに届いてきた







「こんにちはおじさん。あら今日はなんだかにぎやかね」





「おっいらっしゃいロゼ」







ロゼと呼ばれた女性はエド達と少し話をしたあと



すぐに行ってしまった





そのロゼが行った先を見つめているとクロアはあるものが目に入った







「…!なんでここに…?」







「どうした?」







クロアの目線を追ったがエドには何も見えなかった







「…ごめん…先に行ってて。忘れ物しちゃった☆」







「はぁ?」





「それにちょっと気になることもあるから、用済んだら先次の町に行ってて!」







クロアはそう言うと走りだした








「おい!クロア!!」








もう走り去ったクロアの元にエドの声は届かなかった





































「なんで…ここに……」





間違えるはずない





あの目はこないだ別れたばかりの







「…イヴ…!」







私の先には黒い毛の猫がいた





「待ってってば!イヴ!」





捕まえようにも逃げていってしまう





そして余り使われていないような建物の中に入っていってしまった





私も後をつけ階段を昇り



少しだけ外の光りが入るような部屋でイヴを見つけた












そう思った












イヴが入っていったと思われた部屋には猫はいなくて代わりに





人が立っていた





暗くてシルエットしかわからないけれど…





「…あ…あの…此処に猫入ってきませんでしたか?黒い…」





私は勇気を出して誰だかもわからないそのシルエットに話し掛けてみた







しかし返事は返って来ない







その代わりにその人は一歩一歩近づいて来た





だんだん近づくにつれそのシルエットは色をつけはっきりしていく










髪の長さ







髪の色







目の色









ドクン









鼓動が煩い









ドクン









だってそれは









ドクン









会いたくて会いたくなかった


















「もしかして俺の事忘れちゃった?」


















ドクンッ
















「エンヴィー…っ…」





「…覚えていてくれて良かった」












見慣れた姿の彼はそう笑った







「…………ぃ」





「ん?」





「ごめんなさい」







クロアの口から出た言葉は謝罪





どうしても言わなければいけなかった







「あんな別れ方したから…裏切るみたいな感じになっちゃって……」







「うん。そうだね。殺してやろうかと思った」







びくっと肩を震わせたクロアにエンヴィーは笑った





「嘘だけど。ラストから聞いた。大事なものなんでしょ?」





そう言ってクロアの首にあの首飾りをかけた







「あ…」







「なんですぐ手放しちゃうかなぁ〜こんな大事なもの。人間ってそこまで馬鹿だったっけ?…って聞いてる?」





クロアは俯いたまま首にかかった首飾りを見ていた








「”待ってて”って…クロアが遅すぎるから迎えにきたんだけどー?」








エンヴィーはそう言ってクロアの顔を覗き込んだ





クロアは首飾りを握り締めて小さく口を動かした








「…信じてくれてありがとう…」






「どういたしまして」
















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