鋼の錬金術師

□第13話
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「もう大丈夫だよ」





クロアは黒猫を抱き上げて木から降ろす





「みゃ〜」





「人懐っこいなぁ…迷子?」





黒猫は頭をクロアの顔にこすりつけていた







「君は…独りで寂しくない?」







「みゃ」





そう短く鳴くとクロアは黙り込んだ





ぽたっ





黒猫はクロアを見上げるとの顔に水があたる





ぽたっぽたっ














「私は独りが、寂しいよ…傍にいたいのに…っ…」














いつの間にかクロアの目からは大粒の涙が落ちていた





「みゃ!みゃー!」





黒猫はクロアの腕の中であたふたしていた





「ごめんね…泣かれても困るよね」





「みゃー…」





黒猫は心配そうにクロアを見ていた





黒猫と目があうとクロアは涙を拭き取り微笑んだ





そして口の前に人差し指を立て









「泣いてた事は秘密ね」









そう言って黒猫を地面に降ろし





クロアはエド達の元へ戻ろうとした





「みゃ〜〜」





………………………。






































「で?離れようとしないから連れて来たと…」





「あは」





「あはっじゃねぇよ!!猫なんて飼えないだろ!!」





エドが怒ると思っていたが仕方がなかった





木から降ろしてあげたが黒猫は離れようとしなかった





なのでホテルまで連れて来たというわけだ





「だいたいバレたら…」





「大丈夫だって今日だけ私の方の部屋で匿うだけだから!」





そう言って何とかエドを説得することができた





「今日だけだぞ!明日にはこの町から出るからな」





「ありがとうエド!」






私がそう言うとエドはふいっとそっぽを向いた





「なんだよ兄さん。僕の時は戻してこいっていつも言うくせに〜」





「うるせぇな!気分だよ気分!」






アルはいつも捨て猫を拾ってきてはエドに怒られているらしい





ふと時計を見るともう寝てもいいような時間だった






「…じゃあ私部屋戻るね」





「おう」「うん。おやすみ」











しかしこの時





この先起こる様々な物事を






誰もが予想していなかっただろう








いや









予想できなかった































「よし!決めた!君の名前は今日からイヴだぁ!」







「…みゃ?」







イヴと名付けられた黒猫は首を傾げた





「ある人の名前から少し取ったんだけどね」





そうニッコリ笑うとクロアはベッドに入った






「…なーんか…イヴって目がエンヴィーに似てるんだよねぇ…」





「に゛ゃ」





「まぁいーや…おやすみイヴ…」





クロアはそういってぐっすり眠りについた

















「っ…………………………………………………(ば、バレたかと思ったぁぁあ!)」














イヴと呼ばれていた黒猫はパキパキという音と共に姿を変えた





「はぁ…疲れた」





その姿は紛れも無く嫉妬のエンヴィーだった





「イヴって…誰から取ったんだろう…ラスト…グラトニー…おチビさんも違う…弟…焔の大佐…?」





エンヴィーは知っている人の名前を次々に上げていった





「イとヴが入ってる人でしょ?…まずヴが入ってる人なんて………」








エン”ヴィ”ー








…………………。








いや確かに逆にすればイヴになるけど……。





……ああ…だからか











”イヴって目がエンヴィーに似てるんだよねぇ”











そう言ったのは…







クロアは吐息をたてて寝ていた





そっとクロアの頬に触れる







「…エン…ヴィ…」





「…!」







何故か名前を呼ばれた途端





変な気持ちになった





良くわからないけれど…







「…クロアの傍に…いたい…」







そう思った





でもホムンクルスにそんな感情あるわけ…







『ホムンクルスだって感情やプライドがあるんでしょ?人間と何処が違うの?』







クロアの言葉が頭を過ぎる





「……じゃあこの気持ちが何なのか教えてよ」





そっと髪を撫でる





エンヴィーがこの気持ちに気付くのはもう少し後の話

























「んっ…エンヴィー…?」





「みゃぁ?」





目を開けると目の前にはイヴ





カーテンからは日の光が漏れだしていた





「……夢…?」





何時間前なのかもわからないけど





エンヴィーが髪を撫でていたような気がした





ドタドタドタッ!





「クロアー!!」





「っ!!!」





突然のエドの声で私は跳ね上がった





「兄さん!朝から大声出しちゃ駄目だって!」





ドアの外でのやり取りからして何かしら急いでるようだった





ガチャ





「おはよう…どうしたの?」





「早く出発するぞ!」





いきなり過ぎるその発言を理解するのに時間がかかった







「「次の町リオールに!!」」







「へ?」













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