鋼の錬金術師

□第11話
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「お父さん!!」





「…ま、りあ…げほっ…」





マリアの父の元へ来るのが少し遅かったと言えるだろう





「回収し、に…きた…石を」





「もう喋らないで!」






回収






「…クロア…か?」





「…え…」





マリアの父は私をみて名前を呼んだ





「なんで…」





「ノ…ア君…は」





腹部からたくさんの赤い色が溢れていた





マリアの父はそれだけ言うと黙り、なんでもないというかのように首を振る





私たち3人はマリアと二人きりにしてあげようと一旦外に出ることにした





「こんなことって…!」





「くそっ!!」





2人は何処にもぶつけることの出来ない苛々を拳を震わせて抑えるしかなかった





ただ私だけがある言葉を思い出していた





「回収…」












回収ということは…







戻る場所がある







元々賢者の石を持っていた人のところ




































そんな事を考えていると目を赤く腫らしたマリアが外に出て来た





「マリアさん…」





「大丈夫です。石も父も失いましたが…私にはやらないといけないことがあるので」





マリアは涙を拭いて町のあちこちに放たれた火を消すために動き出した







「僕たちも手分けして消しに行こう」





「おう」「うん」















私たち3人も別々の方向へ走り出す





そして私は早速火の手を見つけた





「うへぇ…確かに風で火は消せるけど、間違えれば逆にもっと燃えるんだからっ!」





そういって風を起こすと火はあっという間に消えさっきまでうるさかった燃える音も消えた

















ガラッ









「!」







燃えて脆くなった木材が降ってくる事までは想定できなかった





クロアは目をつぶる





しかし当たるはずの木材は直撃せず頭は砕かれる事なく無事だった









「大丈夫か!」









「エド…」





降ってきた木材を抑え庇ってくれていたのはエドだった





「ここは危ねぇから」





そういってエドはクロアの手を引いて歩き出した





クロアはエドのその行動が若干不自然に思えたが気にする事なくついていった





しばらく歩いていくと道は行き止まりになってしまった










「あーあ…戻るか…」





そういって元来た道を戻ろうと思った瞬間





落ちて来た瓦礫により道はあっという間に塞がった





クロアとエドは閉じ込められた







「どうしよう…エド…」


















「…俺にとっては都合が良いや」


















クロアはその声と口調に肩を震わせた





その声はさっきから頭を過ぎっていた人物のものだった





クロアは恐る恐る振り返ると1番考えたくなかった人物が








そこにはいた













「久しぶりクロア。会えなくて寂しかったよ」













鋭い目





長い黒髪













「…エンヴィー…」





エンヴィーは握っていたクロアの手を壁へ押し付けた





「…っ!」





バランスを崩したクロアは完全に壁に倒れ込んだ







「鋼のおチビさんには会わないでって言わなかったっけ」





「さ、さっき会ったばっかりで…」







クロアはその次の言葉を続けようとしたが





「っ…」







「嘘じゃなくて本当のこと教えくれないかな」







エンヴィーは押さえ付ける手を強めた





クロアがもう観念しよう思った時





突然瓦礫に埋められた道が大きな音と共に開いた







「「クロア!!」」





「エド!アル!」







道の真ん中にいたのはエドとアルだった





エドはクロアを見ると直ぐにエンヴィーに突っ込んでいった





「兄さん!」





「クロアから離れやがれぇ!!」





「おっと!」





エドの攻撃はするっとかわされてしまった





しかしエンヴィーがほんの少しの間クロアから離れた瞬間にエドはクロアをエンヴィーから引き離した





「行くぞ!クロア!」





エドはクロアの手を引き走ろうと思ったが







クロアは突っ立ったままエンヴィーを見ていた







エンヴィーも黙ってクロアを見ている







「クロア!」





アルが呼ぶとクロアは今まで肌身離さず持っていた首飾りをエンヴィーに投げつけた





「!」





エンヴィーがそれを取ったのを見るとクロアはエド達に連れて走っていった












エンヴィーは一人受け取った首飾りを見つめていた














































「クロア…あいつと知り合いか?」





「……ちょっと…父の手掛かり…かな」





エドは「ふーん」と言うと今度はアルが聞いてきた





「何を投げたの?」





「あれは…大切な首飾り」

















大切な










記憶














 

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