鋼の錬金術師

□第1話
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真っ赤な世界に




少女は




ただ独り立っていた





























「…っ!!」





ずっと前から同じ夢を見始めるようになっていた





真っ赤な空間に少女がただ一人立っている



顔はこっちを向いてないため誰だかもわからない





あの少女はいったい…





「…うっ………ゲホっ…う…」





そしてその夢をみたあと必ず吐き気がする




少女のことを考えれば考えるほどに…




あの夢は私に関係あるのか…









クロアは8才の誕生日後から13才の誕生日までの5年間の記憶がまるまるない





母親はクロアが7才の時に事故で亡くなっているため8才の誕生日は父親と2人でお祝いをし



その次の日に父親が『何か』の研究のため家を出て行った




次にクロアが覚えているのは13才の誕生日の夜、軍で保護されていたということ






軍の話によると近所から家の様子がおかしいと連絡がきていたため、様子を見に行くとクロアが部屋で倒れていたらしい





それから軍の力などを借り父親と自分の記憶の手掛かりを探し続けている
















あれから2年が経った



もう15才












「…今日も資料探しに行こうかな」





いつも一人で中央図書館に行ったりして父の手掛かりを探してきた





父は何かの研究をしていた














何かとは














『賢者の石』














伝説の代物



この賢者の石を調べていけばいつか…



いつか父の手掛かりに辿り着けると





だけど父の残した資料のほとんど暗号化されていて一つ解読するのがやっと…





「…エルリック兄弟…かぁ…」





私は図書館に着いてぼそっと呟いた





エルリック兄弟にはあったことがないが賢者の石を探していることは知っている…





「エルリック兄弟がいれば暗号も楽々解いてくれそうなんだけどな…」





しかも兄の方は鋼の錬金術師…





私はまた溜息をつき資料を探し始めた








「使えぬ無能め…さっさと探して来てよ…」









「なんか言ったか…?」









いきなりのその声にクロアは驚き後ろを向いた





「た、大佐…」





その声の主は焔の錬金術師ロイ・マスタング大佐





「鋼のは旅をしているから何処にいるかわからんのだ!そして私は無能ではない!!」





「煩いです!図書館で大声出さないでください!!無能!!!!」







バンッ







怒鳴りあっていると司書の人が机を叩いた






「二人ともうるさいです!!!喧嘩するなら外でやってください!!!!!」







「「………はい……」」



















急に静かになった中クロアが言った





「大佐のせいで私まで怒られたじゃないですか」





「私のせいかね…」





ロイがそういうとまた黙り込み沈黙が続いた









「鋼のは今年の査定がまだだからその時にでも会えるだろう」








「…!!」





「鋼のが来たら連絡をいれる」





大佐はそういって図書館を出ていった





私は慌てて窓を開け外に出て来た大佐に叫んだ






「大佐!ありがと!!」







大佐は微笑みながら手を上げていた



























そして再びクロアは資料を探し始る













「………おとうさん……」









……あれ……



なんかひっかかる…



…まずは暗号を解かないと…







私はそこらの本をかき集め机に積んで作業を進めた














少し経つと突然少年がクロアに話しかけてきた





「あんた錬金術師?」





「え…一応……」





後ろを振り向くとそこには金髪金目の少年が立っていた





「年同じくらいってのに随分難しいの読んでんな」





「…はぁ…」





クロアはいきなりの会話に困った





「お?この暗号は…こうで…こうして…」





「あ、あの…」





「こりゃ文になるな。えーと”E”で…」





彼は勝手に父親の残した暗号を解き始めた























数十分が経った





「おい!」





「すー…」





「寝ちまったか…悪いことしたなぁ…」





ていうかなんで俺はこんなことしているんだ…





「まぁいいや…この暗号の意味は…」






すらすら




白紙の紙に暗号の意味を書き席を立った







すると寝ていた少女がぼそりと寝言のように言った







「金色の目…綺麗…」








何故か顔が熱くなった






綺麗って言われて嬉しい男がいるのかよ…






「なんなんだよ…」



































「アルわりぃ」





「兄さん遅いよ!」





思った通りアルは怒っていた



急いでアルの所に駆け寄った






「もう…何してたんだよ!」





「いや…ちょっとな……」








金色の目…綺麗…








さっきの言葉が頭から離れない





「……兄さん…?…………恋煩い?」





アルに言われてまた顔が熱くなった





「ばばばば馬鹿いってんじゃねーよ!早く宿に戻るぞ!!」





そんな兄をみてアルは心の中で言った










…わかりやすっ…









「あ、そういえば名前聞き忘れた………。」






「え…?」
































すっかり静かになった図書館で私は目を覚ました





さっきの少年がいないことに気付き



そして解いてくれた暗号を読んだ






「…目を背けるな…忘れるな」





ここまではよく父親が言っていた言葉だ











「…例え真実が残酷だとしても」









私の頭の上にははてなマークが浮かんでいた



何故父がこんな暗号を残したのか…














10.08.23 改訂
 

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