秘密の隠し扉

□愛の手
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愛の手


人が寄りつかないような裏路地。

そこで俺は男の股間の間に顔を埋めていた。

「っ…はァ…いいよ…」

俺の頭を撫でながらうっとりしたような声を上げる男。

くちゃくちゃと粘度のある音が俺達を包む。

そして俺が男の逸物の先端に歯を立てた瞬間。

「ああっ!」

グッと俺の頭を撫でていた手に力を込め、男は俺の口の中で果てた。

口の中に吐き出された欲を俺はゴクッと飲み込む。

そしてイった衝撃でボーッとしている男を見上げた。

「良かった?」

微笑みながら甘えた声で聞く。

すると男は満足そうな笑みを浮かべ、俺の頭を撫でた。

「ありがとう。とっても気持ち良かったよ」

「ホント?」

「ああ。はい、気持ち良くしてくれたお礼」

そう言って男は財布から札を取り出す。

それを笑顔で受け取ると、男は身出しなみを整えながら聞いてきた。

「またやってもらってもいいかな?」

「お兄さんが夜に俺を見付けてくれればね」

「なかなか難しいな。まァ、それくらいの価値はあるか」

そう言うと男は俺の頬にキスをして路地を後にした。

男の姿が完全に見えなくなったところで俺は近くに置いてあった鞄に手を伸ばした。

財布に男から受け取った札をしまい、ペットボトルを取り出す。

中の水を口に含むとうがいをした。

それを数回繰り返したところで今度は水を飲む。

「何回やっても慣れねーなァ…」

口に出された瞬間は思わず眉を寄せたくなる。

だけどそんな事をして大事な客を逃がす訳にはいかない。

吐き出したくなる気持ちを抑えて飲み込む。

何度やっても慣れない生臭さ。

客がいなくなるまでは口なんて洗えないけど、見えなくなったらすぐにでも洗う。

それでもまだ生臭い感じが消えてない気がする。

「仕方ねーか」

それに顔射されるよりマシだ。

アレは最悪としか言いようがない。

運が悪けりゃ服まで汚れるからなァ。

一応タオルは常備してるけどシミになる場合もある。

「…さてと」

誰に言うでもなく声を上げて路地から出る。

街の明かりが眩しいと思いながら次の獲物を探す。

新しい客かリピーターか。

リピーターなら街を歩いてりゃアッチから声をかけてくれる。

だから客は大事にしなきゃいけない。

だけど…。
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