秘密の隠し扉

□居場所
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「(急ごう)」

そう思って足を踏み出した時だった。

いきなり路地から出てきた手に腕を掴まれ、そのまま路地に引きずり込まれた。

声を上げる間もなく口を塞がれ、路地の行き止まりまで引きずられた。

そして行き止まりの壁に投げつかられた。

「っ…」

痛む背中に顔をしかめながら顔を上げた俺は目を見開いた。

「ぁ…」

小さく声を上げ、俺はギリギリまで後退した。

そんな俺を目の前にいる男達は愉快そうに笑った。

「こんばんは、綾瀬ちゃん」

「・・・・・」

「あれ〜?お返事はどうしたのかなァ?」

「きっと俺達に会えた嬉しさに声も出ないんだろ」

「嬉しいなァ。俺達も会いたかったぜ〜」

ニヤニヤと笑いながら近付いてくる男達に俺は更に体を後退させようとした。

しかしすでに体は壁と密着しており、ただその場で足を動かしているに過ぎなかった。

「そんなに離れねーで近くで話そうぜ」

「いっ…」

ガシッと髪をわし掴みにされ、俺は短く悲鳴を上げた。

そんな俺に髪を掴んだ男が顔を近付けてくる。

「綾瀬ちゃん、最近いっつも真選組と一緒だよねェ?それで俺達から逃げたつもり?」

「そう言うつもりじゃ…」

「だったら返してくんない?今月分のお金」

「何…?」

男の言葉に俺は髪を掴まれてる痛みに耐えながら見上げた。

「だから今月分のお金」

「もう返した…」

「あァ?利子分が足りねーんだよ」

「利子なんて今までなかった…」

「会社の方針が変わってねェ。今月から利子も返してもらう事になったから」

「そんな…」

そんなのおかしい。

会社の方針が変わったからと言っていきなり過ぎる。

それに借金だけで一杯一杯だ。

利子なんて払えない。

「黙っちゃったけどどーしたのかなァ〜?」

掴んでいる髪を引っ張られ目尻に涙が浮かぶ。

「もしかして払えないとか言わないよなァ」

「・・・・・」

「口があんだから答えろよ!」

「ぐっ…」

不意にとんできた蹴りはきれいに俺の腹に決まった。

それからは殴る蹴るの暴行。

逃げるにも後ろは壁、前は男達。

やり返すにも明らかに俺の方が不利だ。

「っ…ゲホッ…ぁッ…」

痛い…逃げたい…。

「(何でこんな目に…)」

借金をしたのは俺じゃないのに…。

今更ながらそう思った。
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