novel

□今日も明日も明後日も
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「ただいま」
『おかえり、ルキーノ』

日付が変わる間近の時刻、疲れた顔で帰ってきたルキーノに、俺とベルナルドとジュリオは揃って声を掛けた。

「お疲れだな」
「ああ。相手先がなかなか帰してくれなくてな」
「香水の、匂い……」
「今日はとっておきの場所に連れてったんだ。大喜びだったぜ」
「それは上司としても嬉しい限りだが……経費で落としたのか?」
「当たり前だろ。でかい契約が取れるかどうかだ。ここで使わなきゃな」
「…………」
「俺もその店行きてえ! 今度連れてってくれよ、ルキーノ!」

前髪を触りながら沈んでるベルナルドには心の中で同情して、俺はルキーノに笑いかける。

「ああ。今度な」

コートを脱ぎながら、軽い返事が返ってきた。

「そういえば、イヴァンはどうした?」
「明日早いからって、さっさと寝たよ。……明日、ドアの横、確認してやってくれ」
「ああ……」

頷いて、ルキーノが小さく吹き出す。それは愛情に満ちた笑いで、俺とベルナルドもつられて笑った。

「今年は何だろうな?」
「去年、赤毛のアンだったから、今年はオズと魔法使いじゃねえ?」
「あぁ、昔ボスにカカシだってからかわれてたな」
「でも、好き、みたいだ……」
「全くあいつは……。……きっとアリーチェも喜ぶ」

少し泣きそうな顔をして、ルキーノが目を細める。
明日はシャーリーンとアリーチェの命日だ。
俺達は墓の場所を教えてもらっていないから、ルキーノに供える物を預ける。

「俺達からは花を贈るぜ。明日の朝、家に届くようになってる」
「3人分か。大量だな」
「車の後部座席が埋まるかもな」
「ありがとう。……悪いな。墓の場所も教えなくて」
「気にするな。俺達はお前の意志を尊重する」

1番の年長者らしく落ち着いた笑みを浮かべたベルナルドが、眉を下げているルキーノの肩をポンと叩いた。それで、くしゃりとルキーノは破顔した。やっぱり少し泣きそうな顔だったけど、それは悲しみからじゃない。

「……じゃあ、俺寝るわー。おやすみ」
「俺も……。おやすみ、なさい」
「おやすみ。ジャン、ジュリオ」
「おやすみ」

口々に挨拶を交わして、ジュリオと一緒にリビングを出る。
こんな風に兄弟揃って過ごしていく日々が、俺はどうしようもなく幸せで、大好きだ。



今日も明日も明後日も



09/11/05

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