ポケモン文

□おわり
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「ほい、お待たせ」



そう言ってレッドはグリーンの目の前にみかんを置いた。もう少し正確に言うと、みかんが山積みになったカゴを置いたのだ。

グリーンはそれを怪訝そうに見るわけでもなく、至って普通に礼を言い至って普通に食べはじめた。
どうやら彼の中ではこの山積みのみかんは許容範囲内らしい。



「……甘い」

「だろ?」



微かに口角を上げて満足そうに言うグリーンに、彼の向こう側に座ったレッドは笑いながら同じくみかんを口にする。
ただグリーンとは違って二、三個を一気に食べている。グリーンは一個ずつちまちまと食べていた。お互いに共通しているところと言えば、白いすじを気にしてないところだけだろうか。



「うん、さすがキングオブミカン!他のみかんには無い甘さですな!」

「はは、なんだそれ」



みかんを過大評価するレッドにグリーンは笑い声を上げた。レッド以外の人はなかなか見れない笑顔である。
もともと機嫌が良かったレッドはこの笑顔でもっと機嫌を良くし、ついには鼻歌まで歌いはじめた。



「ずいぶんと機嫌が良いな、レッド」

「なんていったって、今年の終わりをグリーンと過ごせるんだからな!」



お前が笑ったから、とはレッドは言わなかった。言ったら最後、高確率でグリーンの機嫌を損ねてしまうからだ。
だからレッドは最もらしいことをグリーンに言った。
レッドみたいに表情には出てないが、機嫌が良かったグリーンは深く詮索せずに納得する。

なんだかんだで、お互いがお互いと一緒に過ごせることが嬉しいのだ。



「はぁー、こたつにみかん……俺の側にグリーン……生きててよかった…!」

「なんだ、俺はこたつにみかんと同じレベルなのか?」

「まさか。俺の中では常にお前が首位独走してるよ。そのくらい知ってるだろー?」

「まあな」



珍しく照れもせずに肯定したグリーンは、ちらりと時計を見る。
机の上に置かれたデジタル時計は新年の0時丁度を示していた。



「みかん食べてたら明けてたな。というかみかんって……」

「んー、なんか平凡だけど…いいんじゃないか?あ、蕎麦食うだろ?母さーん、蕎麦!!」



こたつから出ずに階下の母親に蕎麦を頼むレッドを、グリーンはじっと見つめる。
その視線にレッドは気づき一瞬たじろいたが、すぐにグリーンを見返した。



「レッド、」

「ん?」

「……今年も、よろしく」

「ん。こちらこそ」



どこか照れているグリーンの言葉に、レッドは笑顔で返す。

そしてお互い、穏やかな笑みを浮かべたのだった。







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