ポケモン文
□とどかない
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(ご機嫌いかが?)
「おはよう、ハルカ」
彼女からの返事はない。
大丈夫、もう慣れたから傷つきはしないよ。
だってもう一年経つからね。月日って容赦ないよ、本当。
「今日もいい天気だぞ。あとヒカリがケーキ焼いて来るってよ」
1番仲が良かったヒカリが今日来ることを告げても、ハルカは何も言わない。
閉じられた目は開かない。
今日も彼女は点滴で生命を維持しつつ、かほそい呼吸しかしないんだ。
「………ハルカ、」
すっかり細くなってしまった手を握りつつ、その甲に額をつけて崩れ落ちた。
暖かいし、息もしてるし、生きてるんならいいじゃないか。あの事件から生きてるだけいいじゃないか。
「ハルカ……ぁ」
でもそれじゃ。
それだけじゃダメなんだよ、足りないんだよ。
ハルカがいてくれないと、笑いかけてくれないともうダメなんだよ。
俺はもうダメ、なんだよ。
なあ、ハルカ。
(愛してる、帰ってこい。嗚呼、何回呟いただろう。嗚呼、何回囁いただろう)
(それでもお前は)
何回呟こうが囁こうがお前はまだ目覚めてくれないんだな。
(俺の言葉は、届かない)