ポケモン文
□嘘つきの日
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さて、今日も忙しい一日が始まった。
……なんて頭では清々しいことを考えつつ、低血圧な体を叱咤して起きた俺はとりあえずもう一回ベッドに沈んだ。
眠い。
非常に眠い。
今日のジムはお休みにしようか。ああもうそうしてしまおうか。
どうせ誰も来ないんだ。よしそうしよう。ジムの入口に『本日はお休みします』って貼っとこう。
ということで今日の俺はお休み。
これでコーヒーを飲みつつゆっくりと過ごすことができるぞ。
……隣のレッドが邪魔しなかったらな。
ああ頼む!
邪魔だけはしないでくれ!せっかく自らの我が儘を許した日なんだ!
バトルとか登山とか探検とか買い物で潰そうとしないでくれよ!
「……グリーン!!」
え。
まさか来たのか?
嘘だろ、自分の中の仮定と現実が一致するのがあまりにも早すぎるだろ!
「グリーンったら!」
「……今行くから大人しく待ってろ馬鹿!!」
ったく、何の罰ゲームなんだ。どうせレッド一人なんだろうし、もう寝巻きのまま出てやる。
(実際は昨日の服のまま寝ていた。どっちみちこのまま出てやるが)
「朝っぱらから五月蝿いぞレッド」
さてどうやって罵ってやろうか。まだ朝の8時なのになんてことをしてくれたのでいいか。
……なんかもう眠たすぎてどうでもよくなった。さっさとレッド追い返して寝よう、ソファーで。
「グリーン……」
幾分か覇気の無くなった声を出したレッドを見た。
どうせまた能天気な面してるのだろう、と思っていたのだが………俺が見たのはかなり違った。
「レッド、」
彼は、血まみれだった。
顔には血が飛び散っており、赤いジャケットで押さえられた腹部が刺されたかなにかされたのだろう。
苦痛に歪む顔は彼が滅多にしないもので、傷が相当深いのが分かった。
そしてもう一つ、重要なことも。
「くそ!誰にやられた!」
「グリーン、実は…」
「喋るな!少し無理してでも病院に行くぞ馬鹿レッド!お前がもし死んだりしたら、俺は!」
「ちょ、グリーン」
「一生ケチャップを暴発させた奴を笑うのを我慢しなければいけないんだぞ!」
そう笑いつつ言ってやると慌てていたレッドが止まった。開いた口が閉まってない。
ああ、甘かったなレッド。
インパクトでは結構な点数を上げれるが後はダメだ。
ケチャップの臭いはするし、何と言っても長年一緒にいる俺を騙せると思ったことすら間違いだ。それにいくら世間の行事に興味がないからってエイプリールフールくらい知ってるさ。
「20点、だな」
「それ20点満点で、だろ?」
「んな訳あるか。第一バレバレなんだよ、ケチャップってとこが。朝ご飯はオムライスか?」
「あったりー!でもケチャップが暴発したから、こっちきた。ちぇ、騙せてると思ったのに逆に騙されてるなんてよー」
「本当に甘いな。だから内容点が2点だけなんだよ」
「マジで低いなそれ」
上着を羽織りつつ指でケチャップを拭っていくレッド。彼のおかげで眠気が覚めてしまった。
かといって自ら行動は起こさない。レッドが何か提案したらそれに便乗するつもりだ。
「なあ、グリーン」
レッドは口を開く。
いつものようにこちらの予定を聞こうとしない彼に、俺は苦笑を浮かべつつすぐに返事をかえしたのだった。