ポケモン文

□メリークリスマス
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嫌いな季節がある。

冬だ、冬が嫌いだ。ああ別に寒さが嫌だとかそういうわけじゃない。じゃないと寒い他方に行けないからな。寒さは着込めばいい話だし。

じゃ、何がダメか?
簡潔に言うと、あの誰もが浮かれるイベントだ。
やり過ぎというイルミネーションは目を刺激するし、居すぎという人の波は己の通行を不便にする。
こればかりは着込むとかそういう解決をとれない。自分がどんな行動をとってもこの状態は変わる訳がない、それがこの季節、否、イベントを嫌っている最大の理由だろう。
(自覚してる分、癇癪を起こさない自分に拍手してやりたい)


「―――ハァッ」


無意識に吐いた息が白いことに気付いて、なんで俺は忌み嫌っている浮かれた街に外出しているのかと自分に問い掛ける。

答えは簡単だよ俺。
突然やってきたゴールドに引っ張りだされただけだ。
なんて素晴らしい理由なのだろう!今更になって殴ってやりたくなったぞ!


「………はぁ、」


ふつふつと湧いてきた怒りで握りこぶしを作る。
だがそれは何かに振るわれることはなくすぐさま解かれた。
目の前からいつもの馬鹿面をさらに緩ませたゴールドが走ってきたからだ。
手には食材やジュースが詰まった袋と、真っ白い箱を持っている。俺の推測だとあれはケーキだな。ワンホールの。
上等のケーキだろうそれは、ゴールドに盛大に揺らされているが。俺でも中のケーキの安否が気遣ってしまう。


「悪い、待った!!?」
「……別に。ただあと15分も待たされてたらお前を極寒の海へ突き落とす決意を固めてたな」
「うん、普通に怒ってるね。すいませんでした。45分も放置してて」
「何回俺がこの人込みを蹴散らせてやろうかと考えたことやら。………おい、その箱貸せ」


へ?とゴールドがなんともまあ間抜けな声を出す。
何かいろいろと聞きたそうだったが無視して箱をふんだくり、中をそっと確認。よし大丈夫。

ケーキの安全のため、箱を持ったまま俺はさっさと帰路につくことにした。
ぎゃんぎゃん喚いていたゴールドも慌てて隣に並ぶ。


「ったく俺を置いて行くってどーゆーことさ!!」
「あーうるせー」
「否定するんなら心を込めて否定しろよ!そんなテキトーに否定されても!」
「否定されたことを否定しろよ馬鹿」
「はああ!?」


やはり頭にきたらしいゴールドは立ち止まって文句を言い始める。
勿論それも無視。
だが浮かれた場所から離れたことにより機嫌が良くなった俺は、どういう風のふきまわしか振り返って口を開いた。


「メリークリスマス」


急すぎる俺の似合わない発言にぽかんとしていたゴールドだが、持ち前の復帰力ですぐさまいつもの笑顔を浮かべた。


「メリークリスマス、シルバー!!」


あ、ゴールドと過ごすクリスマスは嫌いではないかも。と思ったのは、この言葉を聞いた直後だった。




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