ポケモン文

□正直無理です
1ページ/1ページ



すごく、ピンチです。


(腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減ったぁー!!)


声に出して叫べないのが苦痛だ、とユウキはどこかズレたことを考えていた。
まあユウキがいる場所が道端だから、べつに叫んでもいいのだが今の彼には叫ぶ気力もないのだろう。

とにかく、空腹がユウキを襲っていた。


(持っていた食べ物は底をついたし。次の街までまだ距離があるし、でもここまできて戻るわけには…!)


かといって今のユウキには自転車に乗る体力もない。ついでに言うと十分な思考もないらしい。
何かないか、と漁り始めたバッグからいろいろと取り出して見ている。


(不思議な飴、きのみ、ボロック………あ、元気のかけらとかこんぺいとうみたい)


黄色いかけらを目の前にして口にいれようとしている男、否、漢・ユウキ。
その奇行を彼の手持ちポケモンは必死に止めようとボールを揺らしたのだが、もちろんユウキには伝わらない。


――どうせ食べるんならきのみにしてくれ!


もうそう願うしかないポケモン達。皆かけらに当たって悶え苦しむユウキを見たくないのだ。
だが、ユウキは本気だ。
開けた口にかけらを放りこもうとしている。


(いっただきまー)
「あれ、ユウキ君?」
「!!!」


食べる直前、グッドタイミングで現れたのはハルカである。
自転車から下りた彼女は不思議そうにユウキを見つめている。


「ハルカ…?」
「どうしたの、道端に座りこんで……ってそれ…」
「はっ!あ、いやその、ええとー」
「もしかしてユウキ君、物凄くお腹減ってる?」


ハルカの言葉を肯定する前にユウキのお腹が音をたてる。そんなべたな展開にユウキは失笑しか出なかった。
ハルカはア然としていたが、すぐにやんわりとした笑みを浮かべ、ユウキの隣に腰掛けた。


「じゃそんなユウキ君にこれ、あげるね」


ユウキに差し出されたものはサンドイッチだった。
少し形が不揃いなところを見るとハルカの手づくりだろう。

受け取ったユウキは空腹が絶頂を迎えていたため、すぐさま噛り付く。
ぺろりと三個平らげたユウキはいつもの調子を取り戻したらしく、笑顔と共にハルカに礼を告げる。
ハルカはいいのいいの、と片手をふりつつ自転車に跨がり、思い出したように声を上げた。


「そうだ。ねぇユウキ君、どうせ食べるんならかけらじゃなくてかたまりにしてね?」


そう言って彼女は颯爽と走り去ってしまった。
取り残されたユウキはただただ慌てるだけである。


「……ハードル、高ぇよ」


呟いた言葉は彼女に届くはずもなく、そこら辺の空気を震わせただけだった。








--------

……毎度のことながら題名カオスですいません。
思い付かない罠!



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ