ポケモン文

□深紅に堕ちる
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桜の赤は、下に埋まった死体の赤。桜が死体の養分を吸い上げて赤色になる。


といっても全ての桜の下に死体が埋まってる訳もないので、気味悪がることなく桜の木の下でお花見をすることにする。俺と、レッドの二人で。
ぶっちゃけると、桜なんて似合わないと思う(特に俺が)

レッドはまだ同じような色だし(でも桜の方はピンクだが)似合う顔付きしてるからいいけど、俺はどっちかというと花が咲く前の色だし。服も紫だし。浮くな、うん。
自覚してるのに何で来たかというと、気の迷いというか、強引に連れて来られたというべきか。ともかく、レッドが急に「桜見にいくぞ!」とかほざきやがったからこうなったんだ。もう人がいないことが救いだ。
そう、誰もいない。
レッドにしては俺に適したいい場所を選んだと思う。そこは褒めてやろう。
当のレッドはちゃっかりと楽しんでおり、口元が緩みっぱなしだ。情けなく思えるが愛着を感じる俺はもうだめだ。相当幸せな頭になってしまった。もういいか、幸せなら。

諦めの自嘲を浮かべていると、ふとレッドがこちらを見ていることに気付いた。


「あ、そーいやーさ」


俺を凝視しつつレッドが言葉を言う。口調からしてなにか嫌な予感がしてならない。


「グリーンってさ、赤色似合わないよなー」
「………」


ああなんだ、そんなに嫌なことではなかったぞ。分かりきってることだから気に止めない。流すぞおい。


「あ、言葉足らずだった。桜の赤は似合わないって言いたかったんだ」
「…………はぁ?」


ここまでこいつの思考が読めないとは!
次に何を言うのかが予想出来なくて思わず眉間にシワを寄せてしまう。レッドは笑いながらふい、と桜を仰いだ。


「お前に似合う赤は、俺だけだよ。桜も血の色もお前には似合わない。ただ、俺だけ」


深い赤が俺を捕らえた。
狂言が甘美な響きを伴って頭の奥を痺れさせる。さらにレッドはこちらに寄り掛かり、その赤を強調させる。

嗚呼、酔ってる。


「ねえ、グリーン」
「……今更かよ」
「はは、」


笑いながら膝に頭を乗っけるレッドの目は、血よりも鮮やかな赤だった。



嗚呼、堕ちる。





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