ポケモン文

□痛いのは、幸せを感じる胸
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避けなきゃ避けなきゃ避けなきゃ。彼が来る、胸が痛くなる、頬が赤くなる。こんなみっともないのを曝すくらいならシロガネ山に篭ったほうがましだぞ俺。いやでもそれは嫌だから、全力であいつを避けるんだ。オーケー、任せときな俺。隠れんぼは昔から得意だったんだぜ。見つける天才と言われた時もあったような気がする(反面隠れるのは多少苦手だった。多少)

なーんて一人で馬鹿みたいなことを思ってると、無数の人の中に目立った髪の色を目敏くも見てしまった。


「あ」


ああやばいぞ。流石見つける天才。早速あの後ろ姿を見つけてしまったじゃないか!!
どうするどうする。
心拍数は異常に跳ね上がり、足は何を思ったか動いてくれない。握りしめた手にはじっとりと汗が滲んで、彼から目が離せない。

なんなんだ、この症状。
いくら雑踏に紛れ込むからって怪しいだろう、これは。


(胸が痛いなぁー)

(なぁシルバー)

(俺、この気持ち認めたくないんだけど)


言っても振り向いてくれないんだな、シルバー。こんなに想ってるのに。今俺の世界を形成するのはお前だけだっていうのに。

嗚呼雑踏と人影が邪魔だ。
彼が掻き消されていく。ついでに俺の心拍数も普通に戻っていく。


(あ、落ち着いた)

(もう最悪だよ、お前のせいで。こんなコソコソした真似をしなきゃなんないし)

(お前は気付いてくれないし。酷い男だよ全く)


ゆっくりと反対方向に踵を返す。追いかける勇気も気力もなかったし、一緒の方向に行くつもりもなかった。だからここで一旦お別れ。

この気持ちにもお別れしたいのだけど、どうやら居座り続けるらしいから考えるのは止めた。



(恋してるなぁー、俺)



シルバーを見て幸せな気分になるなんて終わってるな、うん。


嗚呼、俺に幸あれ!




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