ペルソナ文
□俺のお前
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あの、これ、月森先輩に渡しておいて下さい。
なんてお決まりの台詞と共に渡された真っ白の封筒を手で弄びつつ、俺はさてどうしようと考えていた。
ちなみにこの封筒の中に興味は無い。だってすぐにラブレターというのがわかったから。
「さぁて、マジどうしようかなぁ」
一応言っとく。
別にどうするってもごみ箱に捨てるとか切り刻むとか燃やすとか、そんなどうするではない。
俺はそこまで酷い奴じゃないし、伝えろ渡せと言われたことはちゃんとする。
悩んでるのはこのラブレターの渡し方だ。
俺が渡すのも何か面白みがない。下駄箱に突っ込むのは中々古典的だ。なら一条に協力してもらうか。いやそれなら長瀬が壁だな。
……つーかラブレターか。
呼び出して直に告白できないものかね。そうしたら俺がこんなに画策しなくてもいいのに。
頑張ってメアドとか聞いてメールで告白とかもしてみろよ。つかして下さい。
ああでもそうしたらこんな楽しい遊びがなくなるのか。それは嫌だな。
「陽介、性格悪そうな笑顔を浮かべてるぞ」
「お、月森」
あら顔に出てた?なんて返したら月森は苦笑しつつ俺から手紙を抜き取った。
ちぇ、今回俺は何も楽しくないぞ。
「これ、陽介宛て?」
「お前わかってて聞いてるだろ。ちゃんと返事してやるんだぞ」
「えー、返事するべき?」
「いやしろよ」
月森は普段からは想像できない表情で渋々と封を開けて手紙を読みはじめた。
俺が言わなかったらこいつはこの手紙をどうしたのだろう。それこそアギで燃やし尽くしたかもしれない。
「………陽介、」
「なによ」
「この子知らないんだけど………」
「一年生だからな。少しも接点とか何も無いわけ?」
「手紙によると一回こけてた所を助けてあげたらしい。なんていい人間なんだ俺は。きっとペルソナはヨシツネだったんだな」
「月森君サイテーよ!そしてヨシツネがいい人すぎる!」
笑いつつ言うと月森も笑いつつ手紙を収め始めた。
あの様子だと返事もしないだろう。責められるのが俺だとおもったら少し気が滅入ったが、今度は直接本人の所に行けと言ってやろう。
「浮かない顔かつどこか楽しそうだな、陽介」
「月森君がその子に返事すらしないことを考えるとねぇ。あーやっぱ俺性格悪いかも」
「なんだ自覚なかったのか。……とにかく俺が助けた記憶があるのはお前だけだから仕方がないだろう。それに俺にはお前がいるし」
「照れるぞおい」
「照れとけ。これからはそんな手紙突き返していいぞ。月森先輩にはとても大好きすぎて仕方がない人がもういます、ってな」
「うーわーマジ照れる!」
「だから照れとけ」
笑って俺の前を歩く月森の背中に抱き着いてやりたくなったが、そこは止めといた。
でも俺もお前くらいお前にぞっこんなんだってことを伝えるために背中に飛びついてやった。
「月森は俺のものだもんな」
「当たり前だな」
やはり笑う月森は飛びついた俺の額に額を当ててきて短くキスをしてきたのだった。