ペルソナ文

□新年
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クリスマスは、あれだ、あまり触れてほしくないけど男だらけだったから、年明けこそは月森と一緒に過ごしたいなぁと。

こっそり計画を立てた俺は間近に迫った翌年をこれまでにないほど楽しみにしていた。(そりゃもう、親やクマが心配するほど)





そして待ちに待った新年。
居間でクマと雑魚寝していたのが祟って非常に背中が痛かった。新年早々それか、と思い両手を伸ばすとバキバキって背骨が鳴った。おいおいマジかよ。
内心ため息をついてまだ少し痛む背中を労りつつ、親に例年通りの挨拶をして差し出された雑煮に手を伸ばす。


一口。あ、うまい。
エアコンの風が当たる所に座り込みつつ素直な感想を述べる。
後ろではやっと起きたクマが母にあれこれと聞いていた。初めてだからな、と思わず微笑むと今まで頭から抜けていた計画が思い出される。


うあああ!
なんでどーして忘れてたんだ俺!!



善は急げだ!早くしないとあいつのことだから他の奴と約束を入れるかも……入れる、かも………?





うわああああ!
もう無理だ!あいつもてもてだった!クリスマスなんで俺らと過ごしたの?ってほどもてもてだったんだ!
それに溺愛してる菜々子ちゃんいるしっ!いくら恋人だからって俺でもそこには勝てないだろー!うああ……さらば俺の計画。


「ヨースケ………」
「そんな哀れむ目で俺を見るなよ……つかなんで哀れんでんだよ」
「……雑煮、零してるクマよ……」
「うえっ!!?」


あ、マジだ。だから妙な音と濡れた感覚があったんだな。うん納得。
なんてしてると母の目線が痛いほど刺さってることに気付く。わかってる、拭くから。


「新年そーそーついてないクマね。流石運30未満なヨースケ」
「う、うるさいぞクマ!いまに始まったことじゃねぇよ!!あー、こうなったらパジャマのまま寝て過ごしてやる!」
「濡れてるから着替えたほうがいいクマよ…」
「くっ……お前にだけはそんなこと言われたくなかった……!」


酷いとか喚き始めたクマをかるーく無視して、俺はそこら辺に散らばっていた服を着る。昨日とだいたい一緒だけど、まあいいか。
どうせ今日はふて寝決定だし、外出なんかして別の奴と一緒にいる月森に会ったら辛いし。
うお、想像してリアルにへこんだぜ。阿呆だろ俺。
畜生、妙にいらついたから目の前で餅と格闘しているクマに八つ当たってやる。


「バーカ。ブァーカ」
「えええ!?急にクマにそう言われても!!」
「……バーカ!」
「よよよ、ヨースケの方が馬鹿クマよ!!さっきからケータイ鳴ってるのにとらないしー!!」
「はあっ!?」


慌てて携帯を開くと、確かに着信真っ最中であり。しかもディスプレイに表示されている名前は月森だ。
なんでもっと早く教えなかったんだ馬鹿クマ!と怒鳴りつつ、通話ボタンを押す。


「も、もしもし?」
『ぷっ……なんでそんなに慌ててるの?もしかして寝てた?』
「い、いや、違うけど」
『ならよかった』
「……つか、どうしたんだよお前。俺に電話なんて」


月森、とは言わなかった。
(言ったら言ったでクマが五月蝿そうだからだ)
電話の向こうの月森は、俺の質問をいかにも楽しそうな声で答えた。


『なんで、って……そりゃ陽介に会いたかったから』
「ふあっ!?」
『ククッ……何その声』
「だ、だってお前、別の奴と、ええっ!?」
『勝手な決めつけは自滅だぞ。陽介は俺に会いたかった?会いたくなかった?』
「………会いたかった」
『素直でよろしい。じゃ二人っきりでどこか出よう』


月森の言葉に舞い上がった俺は、そこからの話をとんとん拍子で決めていった。
行き先は……ま、一つしかないわな。街に出たら福袋でも買って、カフェでも行って、月森に奢ってもらったりして。要は普通のデートしてさ。

待ち合わせ場所は?そりゃ勿論駅前だよ、ったら月森は『陽介の家まで行く』だってさ。うわ、デートだよこれ。


電話を切った後そわそわしつつ家の外で待ってる俺って意外に純情じゃね!?とか考えてる俺は乙女で。


でもそんな俺をも許容できちゃうくらい、月森との時間が待ち遠しいのです。





(あけおめ、月森)






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