ペルソナ文

□アンラッキーボーイ3
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澄んだ水の中に投じられた気分だった。身動きが出来ずに落ちていく感覚まである。

ゆらり、ゆらり。

不思議に息は出来たので不自由には思わない。逆にこれまでの事がどうでもよくなってきて安心感までも感じてきてしまった。


(……………)


目を開けると遠く離れた水面から光が降り注いでいるのが見えた。生憎空は見えない。なんだもう俺には空を見る運もないのか、なんて納得して顔をそらす。
空が無いのなら見る意味もなかった。


(……死ぬ、のか)


噛み締めるように頭の中で呟く。頭はぼんやりとしていたが、悲しいことに窓から落ちたのは覚えていた。突き落とされたのではなく自ら足を滑らして落ちたのだから、忘れるはずもない。

我ながらみっともない、ぶざまな死に方だと思う。まだ他人に殺される方がマシだと思った。


(なっさけねーの)


笑いが浮かぶ。(口を開いてもやはり息苦しいことはなかった)
不思議と心中に後悔はない。どうせこれからもジュネスのことでとやかく言われて、くだらない人生を送るだけだったから。



(嗚呼、でも皆が……月森がいたらそんな人生も楽しかったかも)



ちょっと勿体ないな、と思ったら急に、ゴボッ、と肺から空気が吐き出された。


代わりに多量の水が肺の中に入っていく。




(畜生、何だこれ。ついさっきまで笑おうが何しようが苦しくなかったじゃねぇか、ばかやろう!どうせならあのまま苦しまずに逝かせてくれればよかったのに!ええくそ、マジばかやろうっ!)




苦しいともがくけど、体は浮上してくれずに下降していくばかりだ。余りの恐怖に助けて!と叫んだが当たり前のごとく声は出ず、さらに水を吸い込んでしまう結果になる。(それでもどこかクリアな思考はどこまで己の運は悪いのだと、考えていた)



(苦しい苦しい苦しい!!)



遠くなっていく水面にこれでもかと手を伸ばす。死ぬ覚悟は出来ていたのだが、やっぱりダメだった。



(助けて、死にたくない!)



強く願った瞬間、己の手は何者かの手に力強く掴まれていた。

そして意識は薄くなり、目の前が真っ暗になる前に最後に見た光景は、




誰もが見惚れる俺の恋人だった。






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