ペルソナ文
□アンラッキーボーイ2
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「陽介!!!」
叫んだ声が廊下に響き渡った。必死に伸ばした手は窓から落ちていく陽介には届かなかった。
ただア然と立ちすくんでいる俺に教室から出て来た千枝と雪子が話しかけてきた。
「花村がどうかした?」
「お、ちた………」
「え?」
千枝と雪子が窓ガラスがない場所へ駆け寄る。俺も我に返って人込みを掻き分けて下を覗いた。相変わらず土砂降りの雨が地面にたたき付けられていた。
地面には雨のせいで広がった血溜まりと、仰向けに倒れている陽介がいた。
陽介の周りにはりせや完二や直斗がいる。完二は陽介の名前を繰り返し呼んでおり、りせは泣いており、直斗は携帯で救急車を呼んでいるのが分かる。
千枝が崩れ落ちた雪子を支えた。雪子は蒼白な表情で泣きじゃくっている。
その姿を見て、俺は弾かれたように廊下を走り出した。一条や長瀬が引き止める声が聞こえるがそれに止まる俺じゃない。半ば飛び降りながら外に飛び出した。
「せ、先輩…!」
「……陽介は?」
覗き込んだ陽介は上から見たよりも酷くて、冷たくて、血が止まらなかった。息をしていることが唯一の救いだった。
「…よ、すけ…」
触れた所から熱が取られる。その感覚に沸々と不安が沸いてくる。
「陽介……死ぬな……!」
悲痛に絞りだした声が雨音に掻き消される。だが完二や直斗やりせは聞き取ったらしく、りせは彼女らしくぎゅっと左手を握りしめてくれた。
それから救急隊員が来るまで俺は右手で陽介の手を握っていた。
その後は放課後になるまで千枝も雪子も俺も授業に集中出来ずにいた。
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