ペルソナ文

□アンラッキーボーイ1
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自分のペルソナは極端に運が欠落している。(そのため新学期早々痛い所を二度もぶつけたし物体Xを食わされたりしたのだと俺は睨んでいる)


ペルソナの運が俺に関係してくるのか?と言われたらそれはそれで違うのかもしれない。だがペルソナ=俺という法則が成り立つのだからペルソナの運=俺自身の運というのも成り立つだろう。


つか言い出して難だがそういう御託はどーでもいい。ぶっちゃけこの最悪の状態をペルソナの運の低さのせいにしたかっただけ、ようは八つ当たってるだけだ。
我ながら最悪な奴だと思う。

だがこんな状況に立たされたら誰でも何かのせいにしたくなるに違いない。



まず俺の最初の悲劇は、愛用の目覚まし時計が午前2時で活動停止している所から始まった。
慌てて携帯を開くとその携帯は電池切れでこれまた活動停止中。これはやばい、と瞬時に悟った俺は制服に着替えつつ階段を下りると、そこで不様に転げ落ちた。
あーもーいってえな!とか喚き散らしてリビングの時計を見るとなんとまぁ素晴らしい時間を指しているではないですか!リアルにやばい、と思った俺はパンでも食って行こうと台所を見るけど全てクマが平らげていた。悪びれもしてない。(だからぶん殴った)
イテェだの暴力反対だの叫ぶクマを無視して何も食べないまま玄関に向かう。その時クマがコロリと表情を変えて「今日のヨースケは星座占いも血液型占いも最下位だから気をつけるクマー」と言ってきたのだ。

ヒデェ!俺の運ヒデェ!

舌打ちをして玄関を飛び出し走り出す。極力足元に気をつけて走り、いつも通っている小道に向かった。
だがそこは電線の工事で通行止め。一瞬何かの見間違いだと思い茫然としていたのだが、直ぐさま弾かれたように俺は迂回路を目指していた。


そして息も絶え絶えに学校にたどり着いたのは1限目の授業真っ只中の時間帯であり、それがよりによって柏木の授業なのだ。個人授業を避けたい俺はそそくさと屋上に向かう。その途中で階段に躓いたのは痛かった。


(もう最悪……)


誰もいない屋上で膝を抱える。雲行きは悪くて一目見ただけで雨が降ることが分かった。


(なんなんだよクソ…)


己の運を呪いつつ泣きそうになる自分をどうにか留める。そんなことをしているうちに雨、というより豪雨が降り注いで来た。あーっ!なんだこれぇえ!!

バケツをひっくり返した雨に慌てて屋上から退避して、授業の終わりを告げるチャイムを聞く。畜生とかぶつぶつ呟きながら教室に向かって歩いている俺は滑稽に違いない。程よく濡れてるしな。


「お。よぉ花村!」
「はよ、花村」


2階廊下のいつもの場所にいた一条と長瀬が声をかけてくれる。二人ともげんなりしている俺を心配する表情になった。優しい奴らだ。
そんな彼らと適当に言葉を交わして鞄を置くために教室に向かう。まずは教科書の無事を確認しなければ、とか考えているとズルッと足が湿気で出来た水で滑ったのが分かった。

生憎窓側を歩いていた俺は窓を外してまで落ちようとしていた。


ふわり。
まるで敵のガルに浮かされたようだなー。あ、いやかなり昔の感覚だけど。とどこか現実逃避をした訳のわからないことを考えながら俺は宙に浮いていた。

一条と長瀬と、女の子の叫び声が遠くで聞こえる。俺より早く落ちた窓が割れた音を立てている。


ああ、死ぬな。


ふっ、と笑みが洩れた。
もう最悪最低な運を呪うことは無かった。


「陽介!!!」


最期にあいつの声がはっきりと聞こえた分、俺の運も最後の最後でついてくれたようだ。


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