FE文

□10000hitジョフケビ
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目眩を、感じた。



「――――っ」



ぐにゃり、と急に歪む視界に耐え切れず目を閉じる。
目眩と共に酷く痛みだした頭を押さえながら、誰もいない廊下の隅に静かに立ち止まった。



(……これは酷いな)



襲ってきた吐き気をどうにかやり過ごし、詰めていた息を吐き出す。
やけに冷静な頭は何で自分がこんなことになっているのかを必死に考えていた。

ただ、その頭も冷静を装っていただけらしく、途中から今日の職務内容を反復し始めてしまった。



(今日は書類をまとめて提出、領地視察、部下の鍛錬状況の確認……ああ、槍も新調しなければいけなかったな)



毎日毎日繰り返される多忙な職務に、無意識にため息が洩れた。正直言って、休みたい。だが将軍という立場上それは無理な話だ。

なので私は再び襲ってきた吐き気をやり過ごしつつ、職務をしに行かなければならないのだ。



「っ、」



だがどうだこの有様は。

今私は床に俯せに寝転がっている。それは故意的にではなくて、私がたった一歩踏み出しただけで膝から力が抜けてしまっただけだ。
ああ、そんなにも追い詰められていたのか私は。たかが三日徹夜の二日絶食しただけだろう。それくらいで倒れるようではなかったはずだ。
……しかし窓から差し込んでくる日差しが気持ち良いな………。このままだと寝てしまうな、確実に。



(…それでもいいかもな。……いやよくないか)



自問自答に失笑を浮かべ、私は腕に力を入れて上体を起こした。その時襲ってきた目眩は、奥歯を噛み締めてやり過ごした。
そして今度こそ職務をしに行こうと、壁に手をついて立ち上がる。何故か関節が痛んだが気にしている場合ではない。とりあえずさっさと椅子に座りたい。よし、行こう。


と私が一歩踏み出したとき、後ろから聞き慣れた声で名前を呼ばれた。



「将軍っ!!」



その声の主が誰か、ということはすぐにわかった。
確信を持って後ろを振り向くと、案の定心配にこちらを見ているケビンがそこにはいた。



「どうした、ケビン」

「どうしたもこうしたもありません!!お顔が真っ青ですよ!?」

「いや、少し疲れがな」

「なら少しお休まれ下さい!!」



有無を言わさない口調でケビンが私を支える。
私は「そういう場合ではない」と断ろうとしたが、あまりにケビンが心配そうな顔でこちらを見てくるので言葉にできなかった。
ただケビンの言葉に、頷くことしかできなかったのだった。



「後の職務はこのケビンにお任せ下さい。書類は無理かもしれませんが、視察と鍛錬なら出来ますので」

「…本当に済まないな」

「いいえ!将軍のことを思うと、これくらい!」

「そうか、ありがとう」



自分でもどうかと思うくらいの死にそうな声で私は呟いた。そして普段からは考えられない独り言も一緒に呟いてしまう。

勿論ばっちり聞こえたケビンは歩みを止め、まじまじとこちらを見て来た。
……さすがにまずかったか。というか我が儘すぎたか。


出来れば今日一日中一緒にいてくれ、なんて。




「ケビン、」



忘れてくれと言おうとケビンの名を呼んだが、ケビンが何かを言ってきたので続きは遮られてしまった。
そして私はケビンが言ってきた言葉に呆気にとられてしまったのだ。



「こんな自分でよろしいのならいくらでも!一日でも二日でも、喜んで将軍と一緒います!」

「ケビン…!」



はい、と返事をしてケビンは再び歩き始める。
私の頭の中は職務内容ではなくて、先ほどのケビンの言葉が繰り返されていた。

あまりに嬉しくて緩んだ顔を見られたくないので、私は顔を伏せる。そして本当に小さく呟いた。



「ずっと一緒にいてくれ」



その呟きに、ケビンは迷いなく「はい」と返してきた。
そのことが嬉しくて小さく笑う。



いつの間にか、目眩はしなくなっていた。






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大変遅くなってしまいました!彰さんに捧げます。ふぉーゆー!!笑

そして同時にただのジョフケビになってしまったことを謝ります!!そして将軍が体調不良引き起こしてることに対しても謝ります!
どうぞこれからもよろしくお願いします!



10000Hitありがとうございました!





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