FE文

□無傷に包帯
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「セーラぁ、ちょっと治してくれねぇか?」



ちょっと切った、というか斬られたからセーラの所に行った。
まあ診てもらうほどの傷ではなかったのだが、念のためである。
(本当は若様に見つかりたくなくてセーラのところに逃げ込んできたのだ。今若様に見つかったら敵がうじゃうじゃいる宝物庫に直行させられる。それだけは避けねば)



「なによ、急に。いいわよ特別にこのセーラ様が診てあげるわ!ほら早く腕でも足でもみせなさい!」

「おう」



相変わらずの態度だったが俺は素直にかすり傷を負っている腕を見せる。
正直言ったらセーラに言い返してやりたかったのだが、そんなことをしていてセーラが機嫌を損ねたら面倒だ。
今は若様と真反対の所(要は本陣)にいるセーラのところに長くいるようにしなければ。



「………………」



なのにセーラは腕を見たまま治療をしない。
珍しく怪訝そうな表情で、俺に呆れているようだ。
うわ、こいつ怪我人に対して失礼だな。



「怪我…これだけ?」

「他に怪我してるように見えるか?」

「全然。でも今の私の持ってる杖、リブローとリカバーしかないのよねー」

「え、マジ?」



俺がそう聞くとセーラは俺に今の手持ちを見せてくれた。
リブローとリカバーとディヴァインしかない。ライブを持ってないのはどうかと思うぜ、セーラ。
…なんて言ったらああだこうだ言われるのは確実なので、言わないでおこう。



「ちょうどライブが壊れちゃって。なんか輸送隊にも在庫が無いらしいのよー。本当ヘクトル様の適当さには嫌気がさしてくるわ!」

「あ、今回発注したの若様なんだ」

「なんか忙しかったエリウッド様の代わりに発注したらしいわ。武器の発注は完璧なのに杖の発注が雑なのよ!!」

「まーそんな苛々するなよ。で、リカバーでいいわ」

「……ほんきぃ?」



今さっき以上に怪訝な表情をしたセーラだが、手にはリカバーが握られていた。
あー、こいつが話がわかる奴でよかった。他の人だったら確実に我慢しろって言われるな。
さすがセーラ。さすが長年の悪友。さすが俺の恋人。



「たかがかすり傷にリカバーを使う日が来るとは思わなかったわね。高くつくわよマシュー」

「げ………」

「もう遅いわよ、リカバー。はい全快。ということで今度お買い物に付き合いなさいよ!!」



ビシィと指を指してくるセーラに俺は呆れたような返事を返した。
そして全快した腕をまたセーラに突き出し、悪戯を思い付いた子供のように笑った。
最初セーラは理解できてなかったのだが、さすがは悪友。俺の思考を理解してくれたらしい。
呆れた顔で近くの天幕に入って行き、しばらくして包帯を持って出てきた。



「これでいいわね?」

「肉がえぐれてるレベルで頼む」

「まっかせなさい!」



楽しそうな笑みを浮かべたセーラは慣れた手つきで俺の腕に包帯を巻いていく。
お、本当に肉がえぐれてるレベルで巻いてくれてる。
よし、こいつのところに来てよかった!これで俺は敵中に放り込まれなくてすむ!



「あんたも大変よねー。アサシンだからってこき使われて。……はい終わり」

「わかるかこの苦労」

「ま、あんたがヘクトル様から逃げるほどだから相当なんでしょうね。私にはわからないけど」

「…だろうな」



ふっ、と失笑。まあ後方で魔法ぶっ放してればいいセーラには俺の苦労はわからないな。

そんなことを考えていたら、セーラが俺の包帯を巻いてない腕を引っ張って天幕に連れて行った。
中には誰もいない。



「ちょ、セーラ?」

「今ヘクトル様戻って来てたわよ?でもこの私に任せておきなさい!マシューが働かなくていい口実なんて腐るほどあるもの」



だから今日はもう休んでいいわよ、大怪我をしたマシュー?
と言ってセーラは不敵に笑う。なんかとっても頼もしい。
本当にこいつが悪友で、恋人でよかった。



「ありがとな…セーラ」

「マシューが本当に怪我するのは嫌だから、このくらいどうってことないわよ!ありがたく思いなさいね!」



ふふん、と笑いセーラは天幕を出て行った。きっと若様に会いに行くのだろう。
若様には悪いと思うが、今回はマジで前線に行きたくないんです。だってジェネラルばっかりだから。

あー、本当にセーラに感謝だ。
とりあえずなんかしてやらないとな。


……ここに帰ってきたら抱きしめてやるか。
あ、でもこの包帯が邪魔かもな。

この、傷がない腕に巻かれた包帯が。
俺の我が儘とセーラの配慮できつく巻かれた包帯が。



「…まあいいか」



多少邪魔かもしれないが抱きしめられないのではないから、妥協しよう。



ああ、早く帰ってこないかな。















仕事免除されて上機嫌なマシューさんと人が違ったようなセーラさんでした。
久々に書いたから別人すぎて笑ったわ(^p^)






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