FE文

□荒治療
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「おら、脱げ」

「……………いやだ」



このやり取りはもう三回は繰り替えされている。
服を脱ぐことを頑なに拒み続けるアイクに、元々そんなに気が長いほうじゃないシノンはぶちギレた。


持っていた弓を置き、ここが戦場だということを忘れてアイクに怒鳴り付ける。
(といっても周りにはなんの騒音もなく、敵も味方も近くにはいなかった)



「いいから脱げっつてんだろうが!このクソガキ!」



反論を許さないシノンの勢いに一瞬アイクが怯んだ。その隙を見逃す訳もないシノンは一気にアイクの衣服を剥ぎ取りにかかる。



「ちょ、シノン!」

「うるせぇ。第一お前が大人しく脱いでればこんな暴挙に出なかったぜ」

「自分で暴挙と認めてる奴が偉そうな事言うな」



べっ、と舌を出して言う。

正論を言われたシノンは自分に沸き上がった衝動に従って力任せに殴ろうとしたのだが、アイクの背中……というよりは肩に深々と刺さっている矢を見て珍しくも止めた。



「……こんな怪我しやがってよ」

「っ!!」

「マジで馬鹿だお前は」

「し、シノン……」



シノンの手が傷付近に触れるたびにアイクがびく、と反応をする。
あ、なんかエロいな。とシノンが考えていると、その考えが見透かされたのかアイクが鋭い目つきで睨みつけてきた。だからシノンは虐めるのを止める。



「そう睨むな。とりあえず抜くぞ」

「…………ああ」

「そうそう、素直なのが1番だぜ」



短刀を抜きつつ、シノンはアイクを引き寄せる。
身を強張らせていたアイクだが、シノンの肩に顔を埋めたら自然と力が抜けた。

だらり、という表現が当て嵌まるアイクを抱え直して、シノンは短刀を傷に当てる。



「無理に引き抜こうとしたら、かなり深いところまで刺さってるな」

「………」

「我慢しろよ、おい」

「わかってる」



アイクが背に手を回したのを感じつつ、短刀で閉じかけていた傷を開く。
あまりに痛いのか、アイクはシノンの服をわしづかんで声を殺していた。



「……肩でも噛んどけ」

「ふ………っ!」



ぐち、と少しずつ矢を抜いていく。やじりを残さないように丁寧にゆっくりと。



「ふぅっ!!ん、んっ」

「っ、腰にくるな、これ」

「んん、ぅ」



耳元で、まるで事情中のような声がする。
なるべく気にしなかったシノンだが、やっぱり気になってしまうので少々酷だが一気に抜いてしまうことにした。



「舌、噛むなよ!」

「っあ!んんー!!」



これ、端から見たら相当怪しいな。よかった、誰も近くにいなくて。そうどこか冷静な頭が思った。
シノンは抜けた矢に安堵し、溢れ出て来た血を布で拭う。
そしてぐったりとして動かないアイクに服を着せて、少々乱暴に背負い上げた。



「おい、寝るんじゃねぇぞ。わかったか」

「…………んー」

「聞く気ねぇな」



アイクを背に、弓と剣を両手に持ったシノンがキルロイがいるところを目指して歩き始める。
アイクは懐かしい感覚に頬を緩ませ、寝るなと言われたのを無視して目を閉じた。



(……あたたかい、)



疲れ果てた頭は思考を放棄してしまった。

アイクは「おやすみ」と心で告げ、本格的に寝ることにした。



起きた時に叱咤を受けることの予測が容易に出来て、珍しくも口角が上がったままだったのをアイク自身知るよしもない。



(ありがと、シノン)












なんかすいません/(^O^)\




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