FE文
□破願
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(ヒュウチャド前提チャド独白)
視界が霞む。
ああこれが死ぬということか。思ってたより随分と楽に死ねるんだな。俺が見てきた死ぬ間際の人間は皆苦しそうにもがいていたから、死ぬのは苦しいものだと思い込んでいた。(よくよく考えると、俺がわざと苦しむように殺してるから苦しそうなのは当たり前だった)
「今思うと、相当酷いことしてたな……俺」
重い体を必死に引きずりつつ、そう呟いて嘲笑する。
未だに致命傷となった傷は鈍い痛みを有しているが、今の俺には心地よかった。まるで俺が苦しませて殺した人間に対するせめてもの償いのようだったから。
……こんな俺でも一応、罪悪感はある。
戦争だから仕方がない、と言ったら終わりだけどどこかで償いたいとは思っていた。まだまだ子供の俺にできることはなんでも、精一杯して償おうと思っていた。
けど、まさかこんな形で償うとは思わなかったが。
(まあその償いと思っていることも、ただの自己満足なのだけかもしれないけど)
…でも今確かに俺が思っているのはこれで、言えるのは、これだけだ。
「……本当なら、殺した人の分も、生きないといけないのにな」
そして一生をかけて償っていかなければならないのに。
……いつからこんな風に考えられるようになったのだろう、ああそうだ、あいつに会ってからだ。
人の痛みを十分知っている、ヒュウに会ってからだ。
ヒュウに会って親密になっていくにつれ、俺は理解しかねていた痛みを知り忘れかけていた人を手に掛ける恐怖を思い出した。
なにもかも、ヒュウに教えられたんだ。だから今俺は死を怖がらずに受け入れようとしていられるんだ。
「はは、全部、お前の、おかげだよ。俺が潔く、死ねるのは」
痛みが徐々に引いていくのと同時に、急激な睡魔に襲われる。視界もさっきより霞んでるし、体も重い。歩くのが苦しい。もうこのまま倒れて寝てしまいたい。
そもそも、なんで俺は歩いているんだっけ?
死んでもいいって思っているのに、無様に歩き続けているのは何で?
気持ちはとても落ち着いているのに、泣いているのは何で?
俺はもうしんでいいのに。
おれは、もう。
「おれは………」
ああ、そうだ。
「……………、」
ただあいたかった、だけ。
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題名が当て字/^O^\
叶わない願い…という感じで、破壊される願い。略して破願(笑)