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□夢現
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どのくらいの時がたったのだろうか。
頬に触れる突然の冷たさに浦原の意識は浮上した。
焦点の定まらない瞳を緩慢に巡らせば、
ぼんやりとした視界に鮮やかな金糸が入ってきた。

「すまん。起こしてしもたな。」

突然のことで声が出ない浦原に、
平子は困ったように目尻を下げると
横たわった浦原の髪を優しく撫でた。

「…なん…で…?平子さんが…。
……夢っスか…?」

「どうやろなぁ。喜助が夢や思たら夢やし、
現実や思たら現実なんやない?
夢と現実の境なんか案外曖昧なモンやで。」

平子が優しく囁くと、
浦原は目を閉じ、しばらく考えると徐に口を開いた。

「…夢っス。…これは夢っスね…。
だって…、今すごく幸せなんスから…。」

平子はその言葉に何も言わずに、
今にも泣き出しそうに揺れる浦原の瞳をじっと見つめ、
ゆっくりと顔を近付けると
熱くなっている浦原の頬にキスをした。

「よう寝れるおまじないや。
もう疲れたろ?眠り。
大丈夫や、起きたとき
絶対ええことあるから。」

「もう…、行っちゃうんスか…?」

「喜助、これは夢やで?
夢は覚めなアカン。
手ぇ握っといてやるから、はよ寝ぇ。」

平子は行かないでと伸ばされた浦原の手を取り、
優しく包み込むと眠りを促した。

眠りたくないという本人の意志に反して、
疲れ切っていた身体は次第に意識を沈めた。

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