銀の夢

□小さな世界
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「おい、大丈夫かぁ?」



目を覚ますと目の前には銀髪の男。


「……」


私は黙ってその男を見つめる。


「もしもーし!聞いてんのか?」


私の目の前で手を振る。


「……ここ、何処?」

私は辺りを見回す。

「なんだよ、愛想ねぇなぁ。ここは俺ん家だよ」


どうやら私はソファに寝かされていたらしい。


「・・・誘拐?」

「はァ?銀さんがそんなことする訳ねぇだろ!!ったく、人が助けてやったってのに…」

「…助けた?」

「そーだよ。お前、路地裏で倒れてたんだよ。一体何があったんだ?」





そうだ、思い出した………





私は天人への人身売買に出されるところだったのだ。





田舎の方で暮らしていた私の家族は貧乏だった。
そんな私の家にある話が舞い込んだことが元凶だった。

それは江戸での奉公の話だった。給料もよかったので私はすぐにその話に飛びついた。
家族のために働けることが嬉しかった。

しかし奉公先の住所に行くと倉庫しかなく、中に入ると数人の男たちに囲まれた。

それからは地獄だった。

牢獄のような所で毎日男たちに弄ばれ、心は崩壊していった。

どうやら天人に売るために従順な売りモノを作るためらしい。

(私はこのまま売られて行くんだ・・・)
どれだけ悲しくても涙は枯れてしまっていた。


そして、取り引きの日。

牢から出された時、偶然にも逃げ道を見つけた。
諦めかけていた心を奮い立たせ私は無我夢中で逃げ出したのだった。

そして途中で力尽き、気を失った。



私を助けたというこの男。



信用出来るのだろうか……?










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