迷子の夢

□happy birthday
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マスターの誕生日、豪華な夕食にしたくて

真剣に食材を選ぶ。

そして、メインであるステーキ肉とケーキの材料を購入し、マスターの待つアパートへと帰る。





「いい感じの新鮮なステーキ肉もあったし、甘くて美味しそうな苺もあったし、マスター喜んでくれるかな!」

と、独りでウキウキしながら歩いていると



道の少し先で泣いている女の子が・・・。



(ん?あの子はたしか、近所の子?)




「ねぇ、どうしたの?」

と、しゃがみ込んで聞くと

「・・・ぅっ、壊れちゃったの・・お気にいりだった、ねっ・・ネックレスが・・ぅう」

女の子の足下をみると、

ビーズのネックレスがバラバラになって散らばっている。

「そっか。それは辛かったね」

そう言うと、

女の子はますます泣いてしまった。


(ど、どうしよう・・・)


どうにかして元気を出して欲しいけど、

どうにもできないな。
こんなバラバラになってしまってるんじゃ・・・


ネックレスか・・・・



「・・・あ」

ズボンのポケットにマスターのために作ったネックレスがあることに気付く。


オレの声に反応して、女の子が泣きながらこちらを向く。

そして、無意識にポケットから出していたネックレスに目をとめる。

「わぁ、きれい…」

女の子はネックレスに見とれて、泣き止んだ。

「これ、あげようか?」

女の子は一瞬信じられないという顔をする。

そして、

「え、ホントにいいの?」


「うん、いいよ。お兄さんの手作りなんだ。大切な人のために作ったけど、君が泣き止んでくれたらきっとその人も喜んでくれると思うから」


そして、女の子の首にネックレスをかける。


「うん、よく似合う。とっても可愛いよ。だから、笑ってごらん」

「う、うん!!」

そう言って女の子は満面の笑みをオレに向けてくれる。

「うん、やっぱり笑ってる方がもっと可愛いよ」

「あの、ありがとうございます」

「うん。じゃあオレはもう行くね」

女の子の頭をポン、と撫でる。

「ネックレス、大事にします!!」

「うん、ありがとう」


なんだか、自分も嬉しい気分になって

足取りも軽く家に着いた。


「マスター、ただいま帰りましたー!!」


「おかえり、カイト」


「わぁぁっ!!!どうしたんですか、マスター!!」


出迎えてくれたマスターは、いつものボサボサの髪で黒ぶち眼鏡ではなく

綺麗にドレスアップしたマスターの姿だった。


「あの、今日カイトがお祝いしてくれるって言ってたから・・・。頑張ってお洒落してみたんだけど・・変、かな?」


マスターは下を向いて、
照れながらスカートの裾を握っている。


「あ、いや・・・・す、すごく綺麗です。あまりに綺麗で、びっくりしちゃいました」

と、正直に言うと

「え、・・/////」


マスターの顔が真っ赤になる。

「あ、ありがとう・・///」


「マスター、じゃあ早速ディナーの準備しますね」


「うん、ありがとう」








***********************






そして、楽しいディナーに時間を忘れかけていた時。


あのネックレスのことを思い出す。


どうしよう、マスターのプレゼント。


マスターはオレの料理を喜んで食べてくれて

今もケーキを美味しそうに食べている。



そして、急に黙り込んだオレに気付いてマスターは

「カイト?どうしたの?」

と、心配そうに見つめられる。


「あ、ごめんなさい。なんでもないです。さ、紅茶もどうぞ」


「あ、ありがとう」

そう言ってマスターは笑顔で紅茶を受け取ってくれた。








「あの、マスター・・・」


「ん?どうしたの?」

「実はオレ、マスターのためにプレゼント用意してたんですけど・・・ダメになっちゃって、


誕生日プレゼント、オレじゃ…ダメですか?」


「え・・・/////」


そう言ったマスターの顔が嫌がってるように見えなかったから

オレはマスターを抱き締める。


「ねぇ、マスター。生まれてきてくれてありがとう」


「カイト・・・私こそ、いつもありがとう」


マスターがオレに身体を預ける。


「マスター、これからもオレのことよろしくね」

「もちろんだよ」



オレは抱き締めていた腕をほどき、

マスターに優しくキスをする。

「っ?!!」

突然のことに驚くマスターだったが、

嫌がったりはしなかった。


そして、唇を離すと


「カイト、なんで急にキスなんか・・・/////」

「マスターは無防備過ぎるんです。もっと自分が女の子だって自覚を持ってください」


本当はこんな形で伝えるはずじゃなかったけど仕方ない。



「む、無防備って・・・
それはさ、カイトだからだよ」

「…え?」

「カイトなら、大丈夫だって思ってるから・・・」

「それは、こういうことも含めてですか?」

そう言ってオレはまたマスターにキスをする。


そして、

顔を真っ赤にして頷いた。




「オレ、マスターのこと大好きです」

「私も・・・///」

「ねぇ、マスター?」

「??」

「これからも、オレはずっとマスターのものですよ」

「・・・うん////」








マスター、誕生日おめでとうございます。

また来年も、再来年も、ずっとずっと

オレが側で祝い続けるよ。

マスターがいつも笑っていられるように。






end
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