迷子の夢
□心を癒す歌を
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僕がマスターに初めて会った時、
マスターの目からは輝きが失われていた。
僕を見たマスターは、少しだけ僕を見つめて、すぐに何処かへ行ってしまった。
大学生ぐらいだろうか。
せっかく可愛い顔をしているのにボサボサの髪に隠れてしまってるのはもったいないな、と僕は思った。
僕を買ったのは、マスターではなくマスターの両親。
家はとても大きく、裕福な家庭のようだ。
「あの子ね、歌が大好きなの。たくさん、歌ってあげて」
マスターの母親は何故か涙ながらに言う。
どうして、泣いているの?
どうして、すごく悲しそうなの?
その理由は、すぐに分かった。
マスターの部屋に入ると、広い部屋の中で色々な物が散乱していた。
まるで、誰かが荒らしたかのようだ。
マスターは、その荒れた部屋の中で毛布を被り、パソコンを開いている。
「あの子、ずっと引きこもってるの。学校で、何かあったんだと思うの。でも、何も言ってくれなくて・・・こ、声まで、出なくなっちゃって・・・」
母親が堪えきれずに涙を流す。
「お医者さまの話では、精神的なものでしょうって。心の傷が癒えないと、声は出ないって・・・」
あぁ、それで僕を買ったのか。
僕の歌で、マスターの心を癒すために。
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