小説部屋

□原点は…?
1ページ/3ページ



カサッ…


「(あ、懐かしいな…)」


日向は自室の片付けをしていると、小さな紙を見つけた。

幼稚園時代に描いた絵だ。


「うっわ、自分下手だなぁ」



くすくすと笑いながら幾重にも折り畳まれた画用紙を開いてゆく。
そこには、自分と杏弥が笑顔で手をつないでいる姿が描かれていた。
クレヨンで描かれた絵に、当時を思い出す。


・・・・


小さな頃、体が弱く、引っ込み思案で、あまり自分から遊びに誘えないため、他の子と話すことができず、いつも杏弥についていた。

杏弥も杏弥で、日向を守るためにずっと一緒にいたのだった。

杏弥は今では考えられないくらいに活発で、日向の手を引いては「こっちこいよ!」といろいろな所に連れていった。

弱いものいじめを許さず、正義感が強かった。そして、いつも日向を他の男子から守ってくれていた。



(本当に今じゃ考えられないよな。)





小学四年生のとき。
日向は休養のため引っ越す事になり、離れるのがたまらなく嫌で、二人で家出をした。

小学生であったし、さほど遠くない場所で、わりと簡単に、あっさりと親達に見つかってしまった。



「絶対に行かない!!やだ!!杏弥と離れたくなんかない!!」

「俺だって!!日向と離れたくないんだよ!!」


ぼろぼろと大粒の涙を流しながら頼み込んだ二人に、家出について叱れなかった、と聞いたのは後になってからだ。



今となっては懐かしい、いい思い出だ。













.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ