小説部屋
□原点は…?
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カサッ…
「(あ、懐かしいな…)」
日向は自室の片付けをしていると、小さな紙を見つけた。
幼稚園時代に描いた絵だ。
「うっわ、自分下手だなぁ」
くすくすと笑いながら幾重にも折り畳まれた画用紙を開いてゆく。
そこには、自分と杏弥が笑顔で手をつないでいる姿が描かれていた。
クレヨンで描かれた絵に、当時を思い出す。
・・・・
小さな頃、体が弱く、引っ込み思案で、あまり自分から遊びに誘えないため、他の子と話すことができず、いつも杏弥についていた。
杏弥も杏弥で、日向を守るためにずっと一緒にいたのだった。
杏弥は今では考えられないくらいに活発で、日向の手を引いては「こっちこいよ!」といろいろな所に連れていった。
弱いものいじめを許さず、正義感が強かった。そして、いつも日向を他の男子から守ってくれていた。
(本当に今じゃ考えられないよな。)
小学四年生のとき。
日向は休養のため引っ越す事になり、離れるのがたまらなく嫌で、二人で家出をした。
小学生であったし、さほど遠くない場所で、わりと簡単に、あっさりと親達に見つかってしまった。
「絶対に行かない!!やだ!!杏弥と離れたくなんかない!!」
「俺だって!!日向と離れたくないんだよ!!」
ぼろぼろと大粒の涙を流しながら頼み込んだ二人に、家出について叱れなかった、と聞いたのは後になってからだ。
今となっては懐かしい、いい思い出だ。
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