企画
□いつかはこない
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「やだっ!行かないで!やだ!!」
必死に引き止めようとするも手は届かない。
「なあなあー」
「行くなよ!」
泣いて、泣いて、ぐちゃぐちゃな顔で、後少しで届きそうな手を伸ばす。
あと5cm――――
「ちー。ううん。千歳(ちとせ)」
「行かないで!!!」
「―――愛してる」
そして、後少しで届きそうな手は一生届かない手になった。
彼は、青年は消えた。跡形もなく。この世界から。
残るは少年1人。
止まることを知らない涙は流れ続ける。
震える体を抱きしめる人はもういない。
――――
「よし。」
いつかの泣いていた少年はいない。
どこかあの青年のような空気を身につけた少年が1人そこにいる。
「啓。行ってくるね。」
笑って、写真に向かって言う。
「今日もいっぱい笑って、いっぱい戦ってくる。」
お天道様も陰るような笑顔。
「愛してる、啓。」
そして少年は戦士になる。
今日も1日戦い続ける。
太陽の下で、日常という名の戦場で。
「いってきます!」
そして―――――――
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