とある狐の物語

□02-解かれた手が離せない・第一章
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=三代目の提案= 



俺が暗部で活躍するようになって暫くした頃。
俺に新しい護衛兼教育係が付けられる事になった。


「テンゾウだけで、いいのに……」


そう呟く俺に、爺ちゃんは優しい笑みを浮かべながら言った。
皺くちゃの掌で俺の頭を撫でながら。


「暗部の中でもテンゾウは若いが、もう少し歳の近い者との接触も必要な事じゃよ。ナルト」


つまり、護衛兼教育係と言うのはただの名目で、俺に友達を作れという事らしい。

友達なんてもっと要らない存在なのに、爺ちゃんの考えている事は、俺には理解できない。


「とは言え、僕よりも若くてナルトと直接接触させられる人物なんて居るんですか?」

「そうじゃのう……」

「同年代、その前後の年齢を含めても、ナルトと対等に会話が成り立つ子供なんて居るとは思えないのですが……ナルトは忍としての能力以前に、考え方や精神面等も一般的な子供とは異なります。それに、何かあった時、ナルトの足手纏になる様では、ナルトが危険です」

「……」


テンゾウの言葉に、爺ちゃんはすっかり黙り込んでしまった。

九尾の事を抜きに考えても、俺は同世代の子供達に比べると、かなり異質らしい。

自分ではあまり自覚は無いのだが、爺ちゃん曰く、『子供らしくない子供』なのだそうだ。


(……それって、任務をする上で何か問題になるのかな?)


俺が首を傾げていると、ある意味見知った気配が火影室に近付いてきた。

俺は急いで偽りの姿から更なる偽りの姿へと変化して、爺ちゃんの膝の上からテンゾウの横へと移動した。

そして、テンゾウの手を取りその場を後にした。


「……それでは火影様。1この話はまた、今度……」

「あぁ、そうじゃな」


俺達が瞬身で立ち去った直後、火影室に扉をノックする音が響いた。


――トントンッ。


訪れたのは、あの日朝市で出会った、テンゾウが『先輩』と呼んでいた銀髪の少年だった。
少年もまた、年若い分類に入る暗部だった。

けれどその少年が、新しい護衛兼教育係の候補に挙がる事は無かった。
テンゾウとも親しく、実力もそれなりに有るのに……。

年若い分類に入ると言っても、俺とは一回り近く歳が離れてい、(子守りが)経験不足だからと爺ちゃんは言っていたけれど……。
何となく、俺には言えない、別の理由が有るような気がした。

俺としては、あまり関わりたく無いと思っていた相手だったので良かったのだが、何処か不自然だなと思った。



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2012/06/06 up
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