短編集
□絶対=厳密に!
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夕陽が差し込む放課後の教室。
あたしは窓際の自分の席から、一人の…いや、一匹の男子を観察していた。
その名も、田島悠一郎!!
アホで有名なその野球馬鹿を、あたしは好きになってしまった。
はじめは、その人懐っこさがカワイイ!なんて思ってて。
そのうち、たまに見せる真剣な表情や姿勢がカッコいいと思うようになり。
いつしか…あの笑顔を隣でずっと見ていたい、とか思ってる自分がいた。
(まぁ結局は一目惚れなんだよね)
そんなことを考えていたら、グラウンドの彼の姿を完全に見失ってしまった。
『んむむむ…?』
必死に目を凝らし探していると、後ろに人の気配を感じた。ふっと振り返ると、なんとまあ探していた本人が…!
ビックリしすぎて口があんぐり。
『悠…?なんでここに?』
「んー?お前が見えたから!」
ニヒヒッと笑う彼。
(今、私の心臓やばかった。なんかドッキーンとかいったぞ!)
『やめてよ、殺人っ!』
「はぁー?なんじゃそりゃ」
君のキラースマイルのことだよ、悠。
それからあたし達は、少しの時間だけど色々な話を交わした。
今回のテストがどうだったとか、野球部の紹介とか、野球の良さ、野球のルールなど…後半からほぼ悠しか喋ってないが。
何気なく顔を上げると、悠があたしをじっと見つめていた。あの真剣な目で。
しばらくの静寂。
だんだん早くなるあたしの心臓の音が聞こえる。
「なーなー、オレら、付き合わない?」
『へっ、は?…はいぃっ!?』
(信じらんないっ!!いきなり何を…っ)
あの悠と“付き合う”って、それって、恋人になるってことだろうか?
あまりにも急で、わけがわからない!
「だってオレ、好きなんだもん。……***は?」
(あたし…あたしは、悠が好きだけど)
そう聞かれ、黙り込むあたしに悠が一言。
「厳密に幸せにしてやるから!」
『…厳密に?』
「そう!厳密にっ!!」
彼の言葉が、笑顔が、いつもあたしの背中を押してくれる。
悠が好きだって自信を持って言える。
だって、
あたしたち厳密に結ばれる運命だもん。