短編集
□淡雪の中で君と
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『なんでー?ここで落としたはずなのに、ない…っ』
「ねえ、探してるのはこれ?」
出会いは、寒い冬の日。
私が落とした手袋を、ゴンが拾ってくれたのがきっかけで、仲良くなった。
お礼にジュースを奢って、近くの公園のベンチで少し話をしようということに。
最初は世間話だったんだけど、ゴンの話はワクワクして面白くて。
(なんだか、ゴンは、眩しい)
話も合い、盛り上がり、寒いのも忘れて語り合ってしまった。
ゴンとその場所で話すのが、いつしか私の日課になっていた。
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君といる時間が長くなるにつれて、もっともっと君を知りたいて思った。
君のその瞳が映したもの、その心が感じたものを共有したいと思った。
わからない話だって、君が笑ってると、私も笑顔になれたよ。
なんでだろうね、ゴン。
不思議だよね。
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ふと気がつけば、雪。
『わぁっ』「雪だー!!」
二人で歓声をあげる。
タイミングがぴったり同じで、目を見合わせてあははって笑い合った。
君といると いつも胸のあたりが
温かいような むず痒いような。
『 』
この感情を、言葉に出来る自信が、そのときの私にはまだなかった。
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その日、ゴンは来なかった。
次の日も。その次の日も。
3日間。たった3日会えないだけで寂しい…
毎日会えることが、一緒にいることが、当たり前だと思ってた。
君に出会うまでどうやって生きてきたんだっけ…?
君がいないと私は、こんなにも脆い存在だったなんて。
『ゴン…好き、』
気付いたら、もう、離れられなくなる
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風邪をひいて、しばらく公園に行けない日が2、3日続いた。
ゴンが来ない間も毎日通ってたからなぁ……なんて一人感傷に浸る。
(まぁ、ゴンが来る可能性低いし…。)
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久々に顔を出した公園。
そこには、彼の姿があった。
ずっと会いたかった、ゴンが、いた
こちらに気が付いて、駆け寄ってくる彼。
「ごめんね!しばらく来れなくて!オレ……***に会えなくて、すっごくすっごく寂しかったんだ」
『私も…同じだよ、ゴン』
ちらほらと舞い落ちる淡雪の中
二人の白い吐息が空の灰色に消えてゆく
紅く染まる頬、悴んだ指先
私を真っ直ぐに見る、君の澄んだ瞳―…
言葉に出来ず、今すぐ溶けてしまいそうだった、とても脆いこの気持ちを、君に。
淡雪のような恋が、届きますように。
『……ゴンのことが好きです』