作文〜3〜

□忘れないから■水谷誕生日作文■
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※水谷中心ですがアベミハです※


忘れないから


 16歳の誕生日も当たり前だけどやっぱり冬休み真っ最中だった。当たり前だけどね・・
 この日俺の携帯にはたくさんのメッセージが届いた。部活の仲間やクラスメイト、さらに中学時代の友達などなどから誕生日おめでとうとお祝いのメールがたくさん届いた。
 俺って人気者じゃん?って、ちょっとにやける。
 本当はわかってるよ。俺が“おめでとう”って送るから、送り返してくれる人もいるってこと。でも、それでもやっぱり寂しがり屋の俺としては嬉しい。

 そしてこれもわかっていたけど同じクラスの阿部からだけは特に何も言われなかったし、当然メールも届かなかった。それでも、なんだかそれが阿部だって思っていたから気にしてなかった。
 逆に、こういう阿部が俺は嫌いじゃない。好き嫌い、興味ある無しがはっきりしてるそんな阿部がうらやましいと思える。

 始業式の日に靴箱で『誕生日おめでとうー』って田島からタックルされて、その横で三橋がパチパチパチと嬉しそうに手を叩いてくれた。その三橋の顔がなんだか本当にうれしそうだったから俺もにやけてしまった。
「米誕生日だったんだ?」と、知ってたくせにそんな口を聞くのは泉。
「メールくれたんじゃん・・ギリギリだったけど」と、聞こえないかもと思いながら呟くとプイと顔を逸らされた。日付が越えるホントギリギリの時間に届いた“誕生日おめー”のメールにすごく心がこもってることを俺は知ってる。


「へー誕生日だったんだ?いつ?めでてぇーか?」と、どうでもいいような声。もちろん声の主は唯一祝ってくれない阿部隆也。
「阿部だって12月に祝ってもらってガキみてぇに嬉しそうにしてたじゃん」
「そうだぞ!」
「阿部くん も お誕生日 うれし かったでしょ?」と、3人の声が重なった。
俺は、まぁそれが阿部だからねと納得してるから教室に向かってのんびり歩き始めた。
「んだよ。水谷だって別に俺に“おめでとー”とか言われたって嬉しくねぇだろ?」
「はいはい。阿部が俺の誕生日を覚えてるとか、知ってるとか思ってないから大丈夫ですよ。でも三橋の誕生日とか何気に覚えてるんでしょ?」と、軽く受け流すように返したらそこに首まで真っ赤にした阿部がいた。
 え?俺、なんか突然地雷踏みましたか?
「お 別に三橋だけの誕生日おぼえてるわけじゃねーよ。ただ三橋はほら皆でやったじゃん。ケーキ食って、だから覚えてるだけだし・・お前はいつ?今日だった?昨日か?ほら休みだったしさ。わりぃ・・その・・」
 口数多い阿部。なのにしどろもどろの阿部。前から思ってはいたけど阿部ってやっぱりそうなのか。でもって、9組の3人組はとっくに鬼ごっこしながら教室走って行ってるからこの状況もみられてないのが不幸中の幸いなのか?そうなのか?
「えっと・・別に気にしてないって」
「わ 悪かった」
 そんな阿部を見るのがちょっと面白くってからかい半分出来ないとわかっている約束事を取り付けてみた。
「じゃ、10年後の俺の誕生日にさ。阿部が俺の誕生日覚えてたらおめでとうって言ってよ」
「はぁ?なんだよ。それ・・意味わかんねぇし」
「いいじゃん。絶対覚えてないって、絶対やらないって俺わかってるから」
負けず嫌いの阿部を挑発する気はなかったけど、なんか今日はそんな気分だった。
「ちっ。よくわかんねーけど。絶対できねぇって言われるとムカつくから。わかったって言っとく。」
「で、阿部、俺の誕生日いつか知ってんの?」
「一月・・・だろ?」
「三橋が知ってるから三橋に聞けば?」
「三橋以外にも知ってんだろ?さっきの感じじゃ」
「でも三橋でもいいでしょ?」
「なに言いてぇの?さっきから」
 ちょっと押される阿部と、珍しく押す俺。誕生日忘れてたこと(知らなかった)悪かったって少し思ってるのかね?阿部らしくないけど、俺は阿部の時にちゃんと誕生日おめでとうのメールも入れたし、食堂のカレーもおごったもんね。

「まぁいいや。じゃ、10年後の俺の誕生日ね」
「おお」
なんか珍しく丸めこまれた阿部のイラついた顔が面白い。でも、もっと面白い顔見たくて最後にもう一言。
「三橋にお願いしたら?」
「はぁ?何を?」
「10年後俺の誕生日におめでとうって言う約束してるから一緒に言わない?と・か?」
数秒固まった阿部が再び真っ赤になったのを見届けて俺は教室に向かって駆けだした。
 阿部がすごくうらやましかったからそんな意地悪をしたのかもしれない。阿部と三橋はなんだかお似合いとかそんなんじゃなくて、この先当たり前にずっと隣にいるよう気がしたから。だから、ちょっとうらやましかったのかもしれない。
 俺の隣にいて欲しい人は今は同じクラスのマネジだけど、その子が彼女としていてくれる姿なんて自分で想像できないし、阿部と三橋みたいにあんなに性格が違いすぎる二人なのに一緒にいないとお互いだけじゃなくて、周りまで落ちつかない・・そんなパートナーと巡りあえることも今は想像できないから。だから、ちょっとうらやましかったのかも。
 まぁその割に、今の二人の関係は『バッテリー』ってだけってことも事実だけど。

 きっと10年後・・俺の誕生日に『おめでとう』って連絡がくるはず。
その時、阿部の隣に三橋がいると思う。
だから、阿部・・とりあえず俺の誕生日を三橋に聞くところをきっかけに少しは進展してもいいんじゃない?俺っていいやつだったでしょ?って、10年後に思い知らせてやる。

10年後 俺の隣にも素敵な誰かがいるといいなぁ・・なんてね


*10年後*
 
―ちゃんと覚えてたんだ ありがとうね
 隣にいる三橋にもよろしく言っといてね♪―

「阿部くん 水谷くんから返事キタ よ」
「おう」
「よく覚えてたね 阿部くん」
「卒業してからもずっとおめぇが横にいたからじゃね?」
「うおっ」
「まぁ約束だしな・・それに・・」
「ふぇ?」
「まぁある意味きっかけくれたようなもんだしな・・」
「きっかけ?」
「次の10年後も送ってやるよってお前の携帯から返信いれとけ!」


おしまい

2014/1/7

※忘れてたわけじゃないよ!水谷お誕生日おめでとう〜〜
言い訳は日記に書きます!



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