作文〜3〜

□罪と罰
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◇注意◇

少し三橋が病んでます。
そして、当然話しも病んでます。
多分それに伴って阿部も当然病んでますが、今回阿部の描写はほとんどでません。

それでいいと納得頂いた方だけ
下へお進み下さい。
青春・キラキラした感じは一切ありません!!










◇ここから 本文◇








 背中が熱くなるほど近くにいるのに、君との距離は遠くなる。
 触れた部分がこんなにも熱いのに、残るのは小さな傷と大きな心の痛み。

 オレが背負うのは阿部くんのぬくもりという罰・・
 阿部くんが背負うのは・・オレへの罪を課するという罰・・
 どっちが辛いんだろうか?オレ?阿部くん?




 罪と罰

 

 二人きりの部室。月灯りと街燈の光の中、その儀式は始まる。

 阿部くんが背後からオレの腰に手をまわす。腰に回った手はオレが動かないようにがっちりと抑えこむように強い。
それから、うなじに顔を埋めて唇がうなじをチュッと強く吸う。
 たっぷり汗をかいたその場所に、唇を落されて恥ずかしくてオレはロッカーに自分の顔を押しつぶすように隠す。阿部くんはオレのその行動に気がついて、腰に回した手をオレの唇に這わせはじめる。つぶれていた顔が持ち上がり、コツンと額だけがロッカーの冷たい扉にぶつかる。
 阿部くんの唇は少しずつ移動する。小さく、小さく動いていく。時々強く吸いつくその唇に、オレはビクッと身体が固まる。
 しつこくうなじを這いまわる唇。唇の動きはゆっくりで優しい。唇を動き回っている阿部くんの指は、唇と同様ゆっくりだけど、ねっちこくていやらしい。
 その指はオレの唇をツツっとなぞるように動いた後に、口の中に侵入する。
拒もうと思うのに、何故か拒めないまま阿部くんの指を咥えさせられている。
 うなじのキスは当然続行中。しょっぱくて太い指はオレの口の中でぴちゃぴちゃと音を立てながら動いていく。音を立てているのは、指じゃなくてオレの口の中の音だと思うと心臓より頭がグラグラする。

「三橋・・」と、うなじに唇をあてたまま名前を呼ばれる。振りかえることなんて当然できなくて、阿部くんがどんな顔しているのかいつもわからずに不安になる。
「三橋」
 ぴったりと密着したオレたちの身体。阿部くんの身体の変化に気付いているけど、そこから先にはお互い踏みださない。
 オレは阿部くんの呼ぶ声に応えたい。応えたくて、唯一考えてやったことが一つある。口腔内の阿部くんの指を優しく舌で触れること。初めて、それをやった時、阿部くんの身体がピクリと震えた気がした。自分から応えることができると思って嬉しくて、オレは名前を呼ばれるとその行為を始める。
「三橋」
 せつなそうに呼ぶ声。オレはそれを合図にまず舌を動かして、阿部くんの指に舌で触れる。
「三橋」
 泣きそうに呼ぶ声に、その舌をゆっくりと動かしはじめる。
「三橋」
 甘くなっていくその声に、オレは歯にあたる阿部くんの指の付け根付近をなぶるように舌を動かす。
「三橋・・三橋・・」
 オレのことを好きだって勘違いしそうなくらい狂おしいその声に、オレは大胆にその指に舌を絡めて、舐める。じゅるじゅると流れる唾液が唇の端から流れ出すのも気にせずに夢中で舐める。
 顎が疲れて、汗が額から滴り流れる。うっすら開けた目に映るのはロッカーと絨毯のしみ。

「ごめん 三橋」

 終了の合図。
 オレの舌はぴたりとその場所から動かなくなる。それから、自らの意志を持って阿部くんの指を吐きだす。

 さっきまであんなに熱かった頭と身体が急に冷える。

 密着した阿部くんの身体が1cm・2cm・・そして一気に離れた。

「ごめん 三橋」
2回目の同じセリフに「大丈夫だ よ」と、声だけで返事をする。

パタンと閉まる扉の音。パタパタと駆けて行く靴の音。
ズルズルと落ちて行く身体を支えるのは阿部くんの腕、じゃなくてひんやりとしたロッカー。

―勘違い・・しそうだよ・・−

真っ暗な部室に一人取り残されて、こらえきれなくて零れる涙。

 いつか振り向ける日がくるのだろう?
 いつか振り向かせてくれる気があるのだろうか?

「好きだよ 阿部くん・・」
 一人きりになってオレはオレだけの儀式を始めた。

 ロッカーを背にして自分の指で唇に触れる。
 既にそばにいない阿部くん。でも、目を閉じると阿部くんは確かに目の前にいる。
 今度は正面でオレの唇に触れている。ゆっくり右に左に指を動かし、唇に触れた。

 その儀式はそこで終わる。果てることも、到達することも何もない。ただ、妄想の中の阿部くんが自分と向かい合うことだけで今は満足している。

 いつのまにこんな不毛なことが始まったんだっけ?
 
 そういえば、オレが家で勝手に投球練習した罰だったなと思い出して顔を歪めた。そんなきっかけでオレが家にいる時間を少しでも短くするって言ってた・・阿部くん。
何も考えられなくしてやるって言ってた。
 そうこれは、オレへの罰で始まった儀式だった。

 もう何も考えられないよ。ずっとずっと好きだった人にオレは「嘘つき」と言われたあの日から。
もう何も考えられない。練習しないための罰がこんな形の口づけなんて。
もう何も考えられるわけがない。うなじと背中の熱を持ち帰った身体で家で投げるなんてことできるわけがない。

 本当に何も考えられないよ。
 叱られて、怒鳴られた人からの罰がキスだなんて。
 「嘘つき」と罵られて人からの罰がキスだなんて。
 
 でも、確かに罰だよね。だって・・オレ・・阿部くんのことが好きだったから。
 好きだなんて絶対言えないと思っていたけど、本当に絶対言えなくなった。
 そんな楽な選択をさせてくれないから・・この罪を卒業までオレは背負う。

 一生言えない言葉と、一番好きな人からの印を残すほど強く吸われたうなじ。
 振り向かせることも振りかえることもできない恋はオレが背負った罪だ。
 
 今日も罪を償って、今から家に帰る。
 阿部くんの思惑通り、もうボールを持つ気力も体力も無い。

 でもね。阿部くん・・阿部くんは気付いてる?
 オレが最後に名前を呼ばれた時に、必ずその指を噛むことを・・
 うっすらと痕が残るその指を見るたびに、阿部くんがオレの罪を思いだしてオレへの罰を与えることを忘れないようにしているということを。
 きっと、阿部くんは気が付いているはずだ。その刻印に・・
 
部室の扉をゆっくり閉めた。鍵をかけて、自転車置き場へ急ぐ。
そう自転車置き場にはあの人が待っている。
 何もなかった顔であの人は待っている。

「帰るか?」
「うん」

 オレたちは二人で並んで帰る。さっきまでの出来事が何もなかったように。
「帰ってから・・」
「投げないよっ テスト近いし勉強ある」
「三橋・・」
勘違いしそうな声を聞かないふりをしてオレは強くペダルを踏む。
「おやすみ阿部くん」
「三橋」


 振り向かず全速力で逃げた。

 そう、実はここまでが儀式なのかもしれない。

 オレたちはずっと繰り返す
 束縛と嘘と間違いを・・
 それなのに、オレたちは勘違いだけは何故かしない。
 自分を守る唯一の方法をお互い知っている。

 いつか、この儀式が終わる日に壊してしまう日に『勘違い』してみようとオレは決めている。ただ、その日が永遠に来ないかもしれないこともちゃんとわかっているから。

 そして近いうちにまた罪を償おう。
何故ならオレは再び繰り返す・・・・君からの罰を求めるために・・再び繰り返す。きっと・・再び・・



おしまい

13/7/28

うまくまとめきれずにすみません。
なんかこう・・夏らしいものを急に書きたくて・・いやどこが夏らしいものか怪しいですが。色々すみませんっ 

 


♪拍手有難うございます♪♪ご感想頂けますと泣いて喜び

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